海外営業なら「知らない」じゃ済まされないFTAとEPA〜分かりにくい制度の迷路を切り抜けろ

海外営業なら「知らない」じゃ済まされないFTAとEPA〜分かりにくい制度の迷路を切り抜けろ

今日は仕事の話。

 

タイトルの通りFTA・EPAについて。
貿易実務や海外への輸出ビジネスに携わっている人なら、耳にする事も多いと思う。

 

会社の規模にもよると思うけど、FTA・EPAって耳にはするけど、実際に利用する事って少なかったりしないだろうか?
なんとなーく「税制面で優遇されるんだなー」とは知っていても、実際に利用するにはどうしたらいいか分からない。

 

ある程度の規模の企業なら既に利用しているだろうけど、例えば海外展開している中小メーカー企業だと、なかなか体制が整っていなくて
上手く利用できていない事が多い。

 

貿易業務は、楽をしようと思えばいくらでもできる。
通関業者に任せっきりにして、出荷書類を作りさえすれば一応モノは輸出できるからね。
でも、逆にコストを削ろうと思うと意外に余地があって面白い。
優遇税制を利用するのもその1つ。

 

輸送効率とか色々と要素はあるんだけど、今日はその中でFTA・EPAについて。
実はFTAとかよく分かってないけど、「今さら聞けないぜ!」って人もご安心を。
実際、日本で輸出入を行ってる企業でFTAとEPAをちゃんと活用できてるのって半分もないんだから。

 

メーカーの海外営業なら客先に「高い!」と言われたら、そもそも関税がどれくらいかかってるのか?
ってとこに目を向けるべき。それをしないで相手の言い値に近づける為に鉛筆なめながら利益を削って価格を合わせようとするのは短絡的。

 

正直、中小規模のメーカーの方と話をしていると、関税なんて海の向こうの話で、関税優遇制度の利用については輸入者側の問題だ、ってスタンスの人が凄く多い。それでは、海外営業としてはダメだと思う。
例えば、海外のお客さんが日本のA社から買うか、アナタのところから買うか迷ってるなら、まだいい。かかってくる関税は同じだからね。
だけど現地で調達するか日本から買うかって時には、「関税は税金なんだから、関税抜きで価格を比べてくれないとフェアじゃない」なんて理屈は通用しない。

 

とは言っても、FTA・EPAに関する情報は、締結相手国によって内容が違ったり、色々な情報が氾濫していたり、説明が分かりにくかったりで、
調べようにも何から手をつけたらいいのやら、、、ってのが実情。

 

そんな人の為に、今回はメキシコを例にとって、すごーーくざっくりとした説明を。
ワケが分からなくて途方に暮れた何年か前の私のような海外営業マンの役に立てば幸いです(笑)

 

 

そもそもFTA・EPAって何よ?

 

今さら会社で聞けないよね。

 

新聞読めよ!とか言われるもんね。

 

まあ、「新聞読めよ!」とか言う上司に限って、概要しか知らなくて、じゃあ実際にどうやって活用するかって具体論は知らないのが世の真理。

 

FTA(Free Trade Agreement)は自由貿易協定と呼ばれるもので、簡単に言うと、ある国とある国の間で関税や規制を取っ払って、モノやサービスび流通を拡大していきましょうってもの。EPA(Economic Partnership Agreement)は経済連携協定と呼ばれ、FTAがモノとサービスの流通を対象としているのに対して、投資の促進を主な目的にしている。

 

ポイントは、NAFTAのような複数国が加盟するものではなくて、1対1で結ぶもの、ってトコ。
多くの国が参加するよりも、1対1なので話が早い。

 

日本がFTA/EPAを締結してるのは、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN全体、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル。

 

中国、韓国、EUなんかはまだ交渉中だね。

 

モノの観点で言うと、日本の工業系メーカーはタイやマレーシア、フィリピンなんかに進出しているケースが多い。
自動車関係でいうとメキシコが多いよね。

 

これらの国の拠点や客先からすると、ある一定の条件を満たせば優遇関税で輸入できる事になる。
逆にこれらの国から日本に輸入する場合も同じ。
材料をこういう国から買って日本で加工するパターンは多いからね。

 

 

最初のポイント 〜 そもそも、それはMade in Japanなのか?

 

FTA制度を利用して、海外に輸出しようとする時、まず一番大事なのは、

 

アナタが輸出しようとしてるソレ、原産国はどこですか?

 

って事。

 

FTAを利用する大前提は、その原産国が「日本」だって事。

 

そして、何を以て「この製品の原産国は日本です」とするのか?って事。

 

まず、

 

・日本の工場で作ってるから
・輸出者が日本の会社だから

 

ってのは判断基準にはならない。
日本の会社が日本の工場で作っていても原産国が日本じゃないケースは多くある。

 

ん? じゃあ、誰がどうやって決めるんだよ!

 

と思うかも知れない。

 

 

誰が決めるのか?

 

まず、誰が決めるのかと言うと「商工会議所」だ。
こないだ情報漏洩してガチ謝りしてた、あの商工会議所。

 

FTAを利用しようとする時は、まず輸出しようとするものについて商工会議所に原産地を判定して貰う事になる。

 

原産地判定依頼をお願いして、判定して貰う。
そこで「こりゃ、Made in Japanですわ」って事になれば晴れて第一関門突破だ。

 

じゃあ、誰がお願いするのか?

 

それは、

 

輸出者か生産者。

 

例えば、メーカーAで製造した部品を商社Bが輸出する場合は、A社でもB社でも依頼を行う事ができる。
だけど、依頼を行う際には使われている原材料やその価格、構成比など詳細な情報が必要となる。
メーカーAが商社Bにその内容を開示できるならイイけど、それは現実的に難しいケースが多い。

 

なので、依頼は大抵の場合は生産者が行う場合が多い。

 

この判定依頼はウェブサイトから行う。
で、情報に不備がなければ3日くらいで判定される。

 

判断基準

 

原産地の判断基準は、FTAによって(どこの国とのFTAなのか)、そして輸出する物品によって変わって来る。
ただ、どこの国とのFTAでも基本は一緒だけど。

まず、基本的に輸出産品(=輸出するもの)は大きく3つに分類される。

 

1.完全生産品

原材料のレベルから全て国内で生産・飼育・採取されたもの。
要するに、海外から原料を輸入して何かをつくるのではなくて、1から全部日本で作ってるもの。
まあ、農作物なんかが典型だね。

 

2.原材料のみから生産される産品

 

これは、締結国の原材料のみから作られるもの。
例えば、日本とメキシコのFTAを活用する場合、日本かメキシコの原材料のみから作られているものを指す。
正確には第三国からの原材料を使っていても、ある一定の基準を満たしていてその原材料に「日本での工程で実質的な変更が加わった」と見なされる場合があり、その場合もOK。

 

3.非原産材料を使用して生産される産品

日本の工業製品は大体ここに該当する。
中国とか東南アジアから原材料を仕入れて加工して、メキシコに輸出する、みたいなパターンだね。

 

これってMade in Japanって判定されんのか?

 

されるんですわ。
基準さえ満たしていれば。

 

おそらく、日本の企業でFTAを利用する企業は工業系メーカーが一番多いだろうから、
このパターンをメインに話をする。

 

非原産材料から生産されてもMade in Japanとなる基準は?

 

日本や締結相手国の原材料を使ってないのに原産国を日本と判定される場合、どういう理屈なのか?
どこの国とのFTAかを問わず、大まかに2つの基準がある。

 

1. CTCルールに基づく判断

 

CTCって知っているかな?
そう、高速道路で自動的にクレジットカードに料金をチャージする、、、それはETCだろ!

 

はい、すみません。

 

CTCというのは、Change in Tariff Classificationの略で関税番号変更基準って呼ばれるもの。

 

よく分からないよね。

 

まず、関税番号ってのはよくHS コードと呼ばれるもの。
世界共通で使われる6桁の番号で、輸出・輸入するもの全部に振られる番号。

 

例えば、どこの国でもパソコンを輸入・輸出する場合にふられる番号は8471.30って決まってる。
これはWEBで簡単に調べられる。

まあ、トウモロコシから絵画から液晶パネルまで色々な製品に番号がある。
これを税関が判断して、その関税番号をもとに関税を決めるんだね。

 

で、今回のCTCというのは、原材料と最終製品のHSコードが変わってます、という場合。

 

例えば、、、、

 

半導体メモリ:HSコード8542.21
液晶画面:HSコード8471.60
ハードディスク:HSコード8471.70

 

という材料を海外から調達して、パソコン(HSコード8471.30)を日本で生産する。
そうすると、原材料(半導体メモリ、液晶画面、ハードディスク)と最終製品(パソコン)ではHSコードが異なっているよね。
こういう場合、「原産国は日本」と判断される。

 

逆にこの番号が変わってないと、「いや、それ海外から輸入したものをそのまま輸出するだけやん」って判断になって、当然、
原産国=日本とはならないワケだ。

 

大体の工業製品はこのCTC基準で判定される。

 

2.付加価値基準

これは、海外から調達した材料を使って日本で加工した場合、日本での加工によってきちんと付加価値が生まれているかどうか、って基準。
締結相手国によって、産品によって基準が変わるので、自分が輸出するものがどれに該当するのか確認しないといけない。

 

ここを細かに書くとキリがないし、大体はCTCルールの適用が多いので、割愛。

 

CTCルールに沿って決まるのか付加価値基準で決まるのかについては、産品毎に異なる。
自分が輸出する相手国と結ばれているFTAの中に品目別規則ってのがあるから(メキシコFTA附則4の表だったかな)、確認してみよう。
輸出するもののHSコードが分かっていれば、CTCか付加価値基準か調べられる。

 

そして、特定原産地証明

 

それぞれの基準でとにもかくにもMade In Japanという事が認められたら、次は特定原産地証明書を取得する。
FTAを使って輸出するには、この特定原産地証明書ってのが必要になるんだけど、前は締結国毎にバラバラだったフォーマットが統一されて便利になった。
つまり、メキシコ向けだろうとマレーシア向けだろうと、使うフォーマットは一緒って事。

 

ちなみに、原産地証明書と特定原産地証明書は違うから注意が必要。
ただの原産地証明は原産国を知る事はできてもFTAの申請には使えないからね。

 

この特定原産地証明の発給は、輸出者が行う。
例えば、さっきのメーカーA社で造って商社Bが輸出する場合、商社Bが発給申請を行う。
ただ、その場合、判定依頼をしたメーカーAに同意通知書を提出して貰い、原産地判定番号を商社Bに教えて貰う必要がある。
要するに、「原産地判定番号XXXで原産国は日本だよ、と判定された◯◯という製品についてB社が特定原産地証明書を取得します」という同意の旨を
メーカーAが示す事で、商社Bは特定原産地証明を取得できるようになる、という事。

 

そんな感じで特定原産地を取得したら、それを添付して出荷すると。

 

最後に

 

細かいところはかなり省略したけど、大まかなFTA利用の実務はこんな感じ。
税関やJETROその他で定期的にセミナーもやっているので、海外関連部署内に知見をもった人がいなかったら積極的に利用する事をオススメする。

 

日本の製品というのは、質はいいけど高い、というのが一般的。
生産コストの時点で高いのに、そこに関税が加わると、現地の競合と比べて2倍以上になる事だってある。

 

FTAの利用自体は、一時輸入の保税プログラムなどと比べて利用する為のハードルが低い。
お役所が作ったルールなので、非常に分かりづらいけれど、きちんと情報を集めて整理をすると意外に難しくはない。
まずは実績をつくる事。

 

メーカーの場合、輸出する品目は限られて来るはず。
食品から家畜から日用品から工業製品まで輸出しているなら大変だけど、そもそも部署が分かれてるだろうしね。
自分が扱う品目の中で1度実績を作ると2回目からは、多少品目が違ったところでやり方は変わらないのでスムーズ。

 

アナタが海外営業職なら「関係ない」「知らない」では済まされない。
とは言っても、日本の中小メーカーでは利用できていないのが実態だ。
自社で貿易部署を持っていても、インボイスやパッキングリストこそ作るけど、あとは通関業者任せ、みたいなケースが多い。
そういう企業の場合、本気でFTA活用に取り組んでいない場合が多く、大体は経産省のHPを開いてクソ分かりにくい説明に辟易として、そこで終わってしまう。そんなの使わなくても既存ビジネスの出荷は毎月あるわけで、「忙しいし、このままでも別に困らないしー」と先送りされてしまう。

 

いくらイイものを作っても、貿易の部分での努力が足りなければ当然競争力も落ちる。
輸入する側からしても、FTAをきちんと活用してくれないサプライヤーとは取引したくないだろうし。

 

また、海外営業の人にとっては、社内に有識者がいなければ、自分が率先して取り組む事でエッジを立てる事ができる。
是非、一度調べてみて欲しい。

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外営業なら「知らない」じゃ済まされないFTAとEPA〜分かりにくい制度の迷路を切り抜けろ was last modified: 10月 1st, 2015 by Taka