TEDの価値を120%引き出すビジネスパーソンの英語学習2.0 〜 Simon Sinek「優秀なリーダーはいかに行動を促すか」編

目次

Keep it inspiring

 

TEDが英語学習にとって強力なツールとして注目を浴び始めてから数年が経つ。
無料で著名人やあらゆるジャンルの第一人者のプレゼンを視聴できるんだから、英語を学ぶサラリーマンたる我々としては使わない手はない。

 

私自信、TEDはずっと英語学習の為に使っているし、今さらダウンロードの仕方とか、字幕の出し方といった「英語教材としてのTEDの使用方法」みたいな情報は既にかなり出回っているので、わざわざ書く必要ないかなと。

 

ただ、ビジネスパーソンであろう読者の皆さんがTEDを使うなら、英語学習だけで終わっては勿体無い。
英語は情報をやり取りするツールでしかないのに、そこに「英語学習」が絡むことで、どうしても英語が自己目的化してしまう。
つまり、出て来た単語・構文・フレーズの理解や聞き取れた度合いが焦点になってしまう。そうなった瞬間、英語学習は途端につまらないモノになる。

 

だけど、

 

ビジネス書籍を読むような感覚で、プレゼンの内容を咀嚼し、自分の仕事の肥やしにするという事を目的にできれば、英語はゴールではなく知的欲求を満たすプロセスの為のツールとなる。

 

アナタは、好きな洋楽の歌詞の意味を調べた事は無いだろうか?
それは、好きな曲が何を歌っているのか知りたいからやったはず。別に英語学習の為じゃない。
ゴールは「英語を解読すること」ではなく「自分の好きな歌が何を言ってるのか知ること」だったハズ。
これと同じ感覚が鍵となる。

 

「英語学習の為にTEDを使う」という視点を一歩前に進めて「英語を通して知識を手に入れる」という視点で取り組んでみて欲しい。

 

TEDやCNNなどのニュース媒体、その他の情報メディアを英語学習に使う場合、理解には2段階存在する。

 

1つ目は、「英語を理解した段階」。
全ての単語の意味や文章の構造がクリアになった状態で、日本語訳できるレベル。

 

2つ目は「内容を理解した段階」。
特にTEDのような媒体を使う場合、日本語にしたからといって内容を理解できるとは限らない。
ビジネス的な側面や専門的な要素が強いため、そういった部分の背景知識が無いと完全に理解したとは言えない。

 

逆説的だけど、「英語を通じて何かを100%理解した」という経験の積み重ねは、英語力の向上にとてつもない威力を発揮する。単語や文法の強化やTOEIC対策といった「お勉強」も必要な要素だけど、それだけやっていると成長が止まるし、実践で使えない英語しか身に付かない。

 

当然、私達ビジネスパーソンは2つ目の段階まで持って行くべきだ。
英語力の成長は加速する上に、自分自身の仕事の糧となる質の高い知識も得られるからだ。

 

 

 

というワケで今回は;

 

Simon Sinek : How Great Leaders Inspire Action(優れたリーダーはいかにして行動を促すか)

 

Summary(ざっくり言うとだ、、、)

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Sinekが提唱するGolden Circleという枠組み(why, how, what)から見て、一般的にビジネスの現場ではwhatを基点としてコミュニケーションを始めるが、スティーブ・ジョブス、キング牧師、ライト兄弟といった歴史上偉大なリーダーシップを発揮した人物はwhyを基点を基点とする。

 

whatとは、”自分たちは何を売っているのか?”  “他の製品・サービスと何が違うのか?”といったもので、具体的な情報

 

一方

 

whyとは”何故、それを行うのか?作るのか?”といった抽象的な部分。

 

Appleの例
what : iPhone
why:電話を再発明し人々の生活を変える

 

人々に行動を起こさせる、とりわけ購買行動を起こさせるには製品の説明やアピールからではなく、何故それを作ったのか、何故それを提供するのか、というメッセージからコミュニケーションを始める事が有効である。

 

 

This is not about leadership but marketing 3.0

 

 

私は、この動画を見る前はタイトルからして「リーダーシップ論」なのかと思った。
だって、そんなタイトルじゃない(笑)
「いかに周りを巻き込み、フラットな環境を作り、チームとして成功するか」みたいな、ビジネス書籍によくある話だと思ったワケ。

 

 

でも、違う。

 

 

これは、マーケティングの話だ。

 

 

消費者やクライアントに製品やサービスを購入して貰う為には、どのようにコミュニケーションをしていけばいいのかー。
日常的には、「差別化」にフォーカスを当てながら自社の製品やサービスについてのマーケティングメッセージは発信されている。

 

・当社の車は革張りシートで他には無い高級感があって、、、
・当社は既に大企業をクライアントとして抱えており、顧客第一主義で、、、

 

色々と理由を並べて「ウチのはいいですよーー」って事を皆必死になってやってる。

 

これは、コトラーの言うところの「マーケティング2.0」の段階。
フィリップ・コトラーはマーケティングの権威で、彼の著書はマーケティングに関わる人の間では「教科書」のようなもの。

 

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マーケティング 1.0

考え方:製品中心のマーケティング
目的:製品を販売する事
マーケティング・コンセプト:製品開発
マーケティング・ガイドライン:製品説明

 

マーケティング2.0

考え方:消費者志向のマーケティング
目的:消費者を満足させつなぎとめる
マーケティング・コンセプト:差別化
マーケティング・ガイドライン:市場細分化、ターゲット設定、ポジショニング

 

マーケティング3.0

考え方:価値主導のマーケティング
目的:社会をより良いものにすること
マーケティング・コンセプト:価値
マーケティング・ガイドライン:企業のミッション、ビジョン、価値

 

1.0は生産の効率化、流通チャンネルの構築、販売促進といった「いかにたくさん売るか?」が焦点だった時代のもの。
現在中心となってるのは2.0で、年齢、性別、収入etcで市場を細分化してニーズを発掘し、それぞれを満足させる製品・サービスを打ち出して行くアプローチ。どこの企業も「どう他社(製品)と差別化するか?」を考えながら活動をしている。
2.0の例としては:

 

・機能性の高さを全面に押し出しているダイソンの掃除機は、CMできっぱりと「他社にはできません」と言ってるように圧倒的な機能面とそれに伴う高い価格で差別化をしている。

 

・アサヒの缶コーヒー”モーニングショット”は、それまでどこの飲料メーカーも「高級感」とか「豆の品質」をアピールしてたのに対して、「サラリーマン × 朝の時間」という新しい切り口で市場を細分化して、それまでにないポジション取りをして差別化した。

 

・パナソニックは、従来のドラム式洗濯機がそれもファミリー向けでサイズが大き過ぎて価格も高かった為、独身者や2人暮らしの人達にとっては手を出せないものだった。そこで、一回り小さく、価格も抑えられた「プチドラム」を開発し、新たなポジション取りをして差別化した。

 

このように、2.0では「差別化」がキーワードとなっている。
不景気もあって世の中の供給が需要を上回ってしまったもんだから、「作れば売れる」「いいものさえ作れば売れる」の時代が終わって、焦点は「いかに消費者を満足させるか」に移った。ダイソンもアサヒもパナソニックも、「全員に売ろう」とはしてない。同じニーズを持つ特定の人達をターゲットとして、そこにピッタリなものを投下する事で成功している。

 

細かい消費者ニーズに対応するっていう波ができた結果、消費者が色々選択できる商品が一気に増えた。
例えば、自分で好きな色にカスタマイズできるナイキのスニーカーとか、たくさんある中から好きなフレームとレンズを組み合わせて購入するメガネとか。

 

ただ、個人的にはあまりにも選択肢が多過ぎて選ぶのが大変で逆に不便だったり、何でも自分で決めないといけない事への煩わしさっていうネガティブな要素も生まれた側面もあるように思う。2.0でのマーケティングだと、大抵の企業が「お客様にとっての一番はお客様が知ってる」って前提に立っていたから「じゃあ、お客様に決めてもらえばいーじゃん」という発想に陥った結果、選択肢が増え過ぎた部分がある。

 

 

そして、現在はマーケティング3.0に移行しつつある。
そこでは、性能やクオリティといった商品の「機能的価値」に加えて、消費者が手にする「精神的価値」や商品や企業の社会的意義が重視される。

 

抽象的で少し分かりにくいので、例を挙げたいんだけど、AppleやGoogleはよくこの手の話で登場するので割愛。
私の勝手な感覚で1つ我らが日本企業を取り上げたい。

 

ANA
https://www.youtube.com/watch?v=3zB6Jmr4W-Y

 

ちょっとGoogleっぽいCMだよね。
最近ANAのCMは随分と変わったなーと思う。

 

高価でステータスがある、っていうイメージが先行していたビジネスクラスを違う形で打ち出した。
確かに価格は高いけど、そこに待ってる体験がどれだけワクワクするものかを上手に伝えられてると思う。

 

他社のCMは、リクライニングが180°だとか、前の座席との距離が広い、といったいわば「機能的価値」にのみフォーカスを置いていた。
だから、見てるこちら側としては、常日頃からビジネスにしか乗らない人を除けば、「いや、そりゃイイとは思うよ?だけど高いじゃん。ばからしいじゃん。」という感想しかなかった。

 

ただ、ANAのCMはどうかな?
伝わってくるのは「機能」なんかじゃなくて、

 

・機内食とは思えない豪華な食事にワクワクする体験
・自分の部屋のようにくつろいで本を読んだり、仕事してみたり、映画見てみたりするリラックスできる時間
・アテンダント達のフランクだけどおもてなしに満ちたコミュニケーションがある楽しい旅

 

などで、私なんかは素直に「いいなー、なんか楽しそう!」って思うんだよね。
ビジネスクラスって、私も行き先が遠い出張に限っては会社が乗せてくれるんだけどさ(笑)、なんか色々とサービスとかシートの機能とか凄いんだけど、なんか堅苦しくて、「気を遣う空間」ってイメージしかなかったのね。

 

だけど、ANAのコレを見ると、皆笑顔なんだよね。
気を遣う空間じゃなくて、旅をもっと楽しくワクワクさせるものなんだって印象が変わった。

 

 

People don’t buy what you do; People buy why you do it.

 

この言葉をSinekが何度も口にしているように、ここがこのプレゼンの本質の部分。
ここで、もう一度、マーケティング1.0 〜 3.0の話を踏まえてみる。

 

ANAの例でいうと、

 

what : 足を伸ばせる空間と180°リクライニングできる高機能シートを使えるビジネスクラスを提供すること

why: お客様の旅をもっと笑顔にすること

 

Sinekの”People don’t buy what you do ; People buy why you do it”というのは、つまり、消費者は企業側の「うちのはココが凄いですよ、あそこが他社とは違いますよ」っていうメッセージだけでは動かされなくて、企業のミッションやビジョンへの共感や、その商品やサービスに「精神的価値」を見いだした時に動かされるという事。

 

例えば、このCMを見てANAのビジネスに乗った人がいたとする。
その人は、ビジネスクラスにする事によって「ただの移動時間」が「ワクワクする笑顔で溢れる体験」に変わる事に精神的価値を見いだしたという事。

 

マーケティング3.0ではいわば企業理念が大事になってくる。
だけど、企業理念は多くの場合、形だけのものになっていて、実際が伴っていない事が多い。
お客様第一主義、とか言われても全然刺さらない。

 

でも、その企業のビジョンと商品・サービスがしっかり合致している時、人は動かされる。

 

 最後に

 

TEDというのは、英語学習に向いている媒体で、実際にWEBサイトも英語学習に使いやすいように作られている。
だからとても使い勝手がいい。

 

ただ、先ほど言ったように、「英語学習の為のTED」ではなく「TEDを理解する為の英語」という位置づけを忘れない事が本当に重要。
私達は英語を日本語にしただけで内容まで理解できたつもりになってしまう。

 

でも、それは「英語を理解できた」だけであって、内容を理解できたワケではない事に気がつかないといけない。
アナタが学生なら「英語が理解できた」のレベルでいいかも知れない。
TEDはビジネスの側面が非常に強いメディアなので、私達ビジネスパーソンはその内容に肌触りを持って触れる事ができるはずだ。
つまり、「内容まで理解した」と言えるレベルで素材を活用しきる事ができる。

 

逆説的だけど、英語力を伸ばす最大の秘訣は「英語を通じて内容まで理解した」と言える経験をいかに積み上げるかどうか。
文法や単語といった「英語を理解した」レベルの経験だけを積んでいる(ようするに受験生の英語学習)だけの場合と比べると、スピードが全く違ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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