今年の7月に出たばっかりの新書。
簡単に言うと、TOEICをPARTの軸ではなく、英文法という軸で捉えた参考書です。よく出る文法項目52個(時制、関係代名詞etc、、、)に分けて、その基本と例文、練習問題を通して学ぶ仕組み。
基本的なコンセプトとしては、「色々な対策本に手を出す前に文法をもう一度しっかりやり直しましょう」というものだけど、その実力は?
目新しさに走り、結果として鈍ったエッジ
個人的な第一印象を正直に言うと、奇をてらい過ぎて、逆効果。
全パートを横断する形で「文法」でTOEICを斬る、という視点自体は今迄になかったので目を引くけど、果たしてそれが本当に効果的なのか?という疑問があります。策に溺れた感じ(?)
そもそも、TOEICの文法というのは高校レベルまでで習うものしか出ません。単語が難解(ビジネス語が多く、難しく見える)な為に文章が小難しく見えるけれど、使われている文法は決して難しいものではありません。
そして、TOEICにはPART5という文法・語法を問う問題があるワケですが、文法対策をするのであれば、PART5の対策で十分なんじゃない?というのが率直な意見。わざわざ全パートを横断する必要は無い。
もし、仮にPART毎で使われる文法の傾向が全く違うのであれば、このアプローチは理解できます。だけど、そんな事はありません。わざわざリスニングPARTの文章を使って文法を学習するメリットが何なのか、、、という事なんです。
TOEICの文法対策はPART5の対策でまかなえます。
言うなれば、PART5の文法が分かっていれば、他のPARTで登場する英文の文法構造は分かる、という事。
にも関わらず、あえて他のPARTの英文まで使って英文法対策をする本書のコンセプトには「なんで?」と言わざるを得ません。学習効果の点からこの構成にしたのか、それとも目を引く為にこんな構成にしたのか、、、真意は定かではありませんが。
シャンプーがあるのに、あえてボディーソープで髪を洗うような違和感を感じずにはいられない、、、。
いや、洗えるよ?
洗えるけどさ、、、ギッシギシですよ?
効果が無いワケじゃないけど、もっとドンピシャなヤツがあるでしょーよ、って事。
これをやるくらいなら、、、
この本には2つの側面があるように見えます。
1. 中学で習う英文法すら怪しい、という人の対策
これは本書の内容紹介でも言われている事ですが、TOEIC以前にもう基礎の基礎からどうにかしないといけない、というような人が使えるようにできています。だけど、そういうコンセプトの良書は既に沢山あり、あえてこの本を使う必要はありません。TOEICを無理に絡める事で、内容が薄くなっているからです。
2. TOEICの全パートを一通り学習したい
当たり前ですが、「全パートを学習する」という意味において、公式問題集の右に出るものはありません。注意して欲しいのですが、この本に登場する練習問題は、1つの項目について1問程度です。それも、PART1の問題だったり、PART5だったり、PART3だったり、、、。
この本でTOEICのスコアを上げるのはまず無理です。
TOEICという試験に慣れたい、というのであれば何よりも公式問題集。
ただ、公式問題集は解説があっさりしています。
なので、初めてTOEICを受ける人で目標スコアが600点くらいまでの人(つまり、TOEICは初めてだけど英検は1級持ってるような人は除く)で、公式問題集より丁寧な解説や、より親切なアドバイスが欲しい人には「TOEICテスト いきなり600点」のような本もあります。
いずれにしても、2つのポイントそれぞれにおいて、既に実績ある良書が存在していますので、わざわざ「TOEICテスト 全パート対策 英文法」を使う必要は無い、というのが私の意見です。
別にこの本に恨みはありませんが、、、ただでさえ、TOEIC本は種類が多い中で、奇をてらっただけの本は価値が無いと言わざるを得ないっす。
TOEICのスコアを本気で伸ばしたい人、必見
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