15分で相手に変化を起こすプレゼンの本質とスキル(後編)

前回紹介した「ズレたプレゼン」に陥いらない為にはいくつかのテクニックを学び、数をこなす必要がある。
最初は時間がかかるかも知れないが、慣れていくにつれてあなたの頭に馴染んでいく。

 

前回の記事はコチラ
↓ ↓ ↓

15分で相手に変化を起こすプレゼンの本質とスキル(前編)

 

それでは早速、重要ポイントを。

 

目次

1. パワポのテンプレートを鵜呑みにしない

 

プレゼン資料を作成する時、8割の人がパワーポイントを使っている。
その時、無意識にパワポの指示に誘導されていないだろうか?

 

・まず、テンプレートを選ぶ

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・表紙ページでタイトルとサブタイトルを入れる

・ページ毎にタイトルを入力し、テキスト欄に内容を入力していく

・自動的に反映される箇条書きに従ってテキストを入力し、表やグラフを挿入していく

 

パワポはありがた迷惑な事に「ここにタイトルを入力」「ここにテキストを入力」と指示したり、勝手に箇条書きにしようとする。
9割の人はその指示を受けて無意識に「良いプレゼンとはこういうものなんだ」と思ってしまう。

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しかし、注意しなければいけない事がある、

 

それは、

 

パワポの指示通りやっても「良いプレゼン資料」が出来上がるとは限らないという事。

 

何故なら、パワポの機能は使えば使う程、内容が複雑で見にくくなり、見る人の理解を妨げてしまうから。
それに、「どっかで見た事があるような資料」にしかならない。
あなたのプレゼン内容のコンセプトが素晴らしかったとしても、個性は殺され、理解が難しいものになってしまう。
当然、相手に変化を引き起こす事はできない。

 

それを示す最も良い例として取り上げられるのが、パワーポイントというソフトを開発したマイクロソフトのビルゲイツ自身のプレゼン。
最近のTEDのプレゼンなどは実に洗練されているけれど、昔の彼のプレゼンはお世辞にも「洗練されている」とは言いがたいものだった。

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パワポをそのまま使用すると、限られたスペースにあれこれと詰め込みたくなる。
言いたい事を全てスライドに入れてしまう人が多いが、これは余計にスライドをゴチャゴチャさせてしまう。

 

 

2. いきなりパソコンに向かってパワポを開いて作業を始めない

 

パワポはプレゼン資料をつくるツールであって、何かプレゼンのアイディアや洞察を与えてくれるものではない。
にも関わらず、プレゼンの準備となるといきなりパワポを起動してPCに向かう人が多い。

 

あなたが、これをやっているならすぐに止めよう。
PC画面とにらめっこをしてもインスピレーションは湧いてこない。

 

さらに、ストーリーや構成が十分に練られないため、ロジックが弱くなり、プレゼンとしての質を格段に下げてしまう。
パワポに向かっていると極めて表面的な事にしか意識が向かなくなる。

 

・フォントのサイズをどうするか
・フォントの色をどうするか
・会社ロゴをどこに入れるか
・グラフの大きさはどうするか
・アニメーションはどうするか

 

気が付いたらこんな事ばかりしているうちに時間が過ぎてしまった事はないだろうか?
本来、これらは最後の仕上げ段階の要素であって、メインの部分ではない。

 

プレゼンの質を決めるのはストーリ構成やそれを支えるロジックである。
行き当たりばったりで、パワポをこねくり回しながらプレゼンの構成を考えているようでは当然しっかりしたものはできあがらない。

 

では、まず何をするべきか。

 

最初に行うのは2つ。

 

1. 聞く側のニーズは何かを理解する
2. プレゼンによって、どのような意識の変化を起こしたいのか狙いを定める

 

この2つは必ずセットで考えないといけない。

 

例えば、前回の記事で私自身のイタリア出張での失敗談をお話をしたが、
その出張の帰国後に社内報告をスライドを使って行う場合を考えてみたい。
これも一つの立派なプレゼン。

 

聞き手は営業・技術スタッフおよび上司と仮定する。

 

彼らのニーズは;

・イタリア出張の結果、新規ビジネスを獲得できたのかどうか知りたい
・今後のイタリアでの市場拡大を見込めるかどうかを知りたい

といったところ。

 

2つ目にのステップについては、

 

1. 現状(プレゼンを聞く前)の聞き手の意識 = BEFORE
2. プレゼンのメインコンセプト = MAIN CONCEPT
3. プレゼンを聞いた後の聞き手の意識 = AFTER

 

に分けて考えます。

 

今回の例でいくと、

 

1. イタリア市場の現状と今後の自社の展望が分からないので不安 = BEFORE
2. イタリア国内での印刷業界の構造と今後のセールス・製品開発の方向性 のアイディア= MAIN CONCEPT
3. イタリア市場の理解と、今後の打ち手が明確となり、期待を持 = AFTER

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これが今回のプレゼンの狙いとなる。
次はこのBefore/Afterに沿って、ストーリーを構成していく。

 

構成を考える時は、上記のBEFOREからAFTERにもっていくにはどうすればいいか?
どんなロジックが必要で、それを裏付けるにはどんなデータが必要か?
という事を考えていく。

 

大まかにで構わないので、スライド1ページに1つのメッセージを設定して書き出していく。

 

1. イタリア市場開拓の為には現在の当社のアプローチでは通用しない

2. 何故なら、当社が得意とする電子基板のようなインダストリアルな用途は少なく、アパレルを中心とした装飾系の印刷が中心となるから

3. 具体的にはアパレル、ロードバイク、高級酒のラベル印刷

4. その中で、インクの使用量が最も多いセグメントはTシャツを中心としたアパレル系で、今回訪問した3社で月刊使用量は◯◯トンに及ぶ

5. 従って、上記3社だけでも潜在的な売上げ規模は◯◯程度となる

6. 装飾系の用途に求められるインクに必要なのは「高級感」「発色が良い」「色落ちしない」「環境負荷が少ない」という要素になる

7, アパレルに関しては肌に触れるものなので、溶剤系インクではなく、水性インクがメインとなる

8. 水性インクは水に溶けるので、洗濯での色落ちが懸念される

9. アプローチとしては現行の水性インクのラインアップから耐水性試験結果が一番良いものをベースに改良する

10. セールス側のアプローチとしては、小難しいデータを並べ立てた資料とは別に実物の印刷サンプルを用意する事を検討する

 

このように1ページに1メッセージを基本として書き出していきます。

 

ここまでの作業で具体的なツールとしては、ポストイットを使う。
1枚を1ページに見立てて、メッセージを割り当てていく。

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何故、ポストイットなのか。

これには理由がある。

 

一連の書出し作業の後、修正作業が必要だからだ。

 

「このページとこのページはメッセージが重複しているので、こっちはいらなーい」

「このページは2つに分けよう」

「5ページ目と6ページ目を入れ替えよう」

 

そういった作業を繰り返すので、ノートをコマ割りしたものではいちいち消して書き直さなければならないので不便。
ポストイットであれば、ページの入れ替えをする時にいちいち消す必要はない。

 

消せるボールペンのFrxionとポストイットの合わせ技がオススメ。
是非、会社帰りに買って欲しい。

 

3. デザインを洗練させる

 

次はポストイットに書き出したアイディアを実際にパワーポイントに落とし込んでいく。
いきなりPCに向かう場合に比べて格段に整理されている為、スライドの作成はそれほど時間がかからない。

 

そこで意識をおくのがスライドのデザインである。
デザイン次第で伝えるべきメッセージがより伝わる事もあれば死んでしまう事もあるので、とても重要な要素となる。

 

しかし、注意が必要なのは、ここで言うデザインとはフォントの大きさとか、どのテンプレート・デザインを使うとった事だけではない。
より深いレベルで、聴衆の心理に訴えかけるものである。

 

例えば、世界中の優秀なプレゼンターが集うTEDでは、既存のテンプレートを使用する事は禁じられている。
既存のテンプレートは発想を制限してしまうものと見なされているから。

 

「パワポを少し飾り立てたくらいで、効果はどーせ変わらない」

 

そう思うかもしれない。
しかし、デザイン一つで見る人への刺さり方はまるで違う。

 

画像を上手く利用し、メッセージをシンプルに分かりやすくする

 

とても簡単な例だが、食文化とファーストフードに関するテーマで、下記のようなスライドを用意したとする。
まず、言いたい事は分かるが、印象に残らない。
さらにポイントを全てスライドに書き出してしまっているので、聴衆はあなたの方に見向きをしないだろう。

つまり、あなたはあなた自身の声で手振りで聴衆に訴えかけるという最も影響を与え易いコミュニケーションを自分で奪ってしまっている。

 

 

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では、このスライドを次のように変えてみるとどうだろうか。

 

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上のクソつまらないスライドに比べて、目に飛び込んだ瞬間、スライドは大きな印象を与える事ができる。
さらに、細かい内容はスライドに書いていないので、あなた自身が口で説明する事になる。
当然、聴衆はあなたに注目するし、あなたは彼らにダイレクトに訴えかける事ができる。

 

 

 

無駄な装飾は省く

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一方で、画像は使えばいいというものではない。
むやみやたらに使えばスライドがガチャガチャしてしまい、聴衆の理解を妨げるだけになってしまう。
このスライドの背景画像はただの飾りであり、文字を見えにくくしてしまっている。
これがスライドに映し出されて、あなたは一語ずつ目を凝らして読む気になるだろうか?

 

なんとなくカッコいいから、などのような「飾りつけ」としての画像挿入は絶対に避けるべき。

 

メッセージの理解を即す目的以外での画像の挿入はしない。
これを徹底するだけでも、かなり無駄を省き洗練させる事ができる。

 

あと、個人的な意見としては、下のようなスライドを多用する人がいるがオススメしない。

 

 

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まず、センスがない。
とってつけた感まる出し。

 

握手の背景の草原とか意味わからないし、ビルの写真も本当に自分の会社ならいいが、そうではない場合は
ただの見栄っ張りになる。

 

4. 主役は自分

 

私の少ない経験則ではあるが、とかく日本人のプレゼンは他国の人に比べてスライドに重きを置き過ぎている。
確かにプレゼン資料は重要だが、あくまで主役、つまりプレゼンターは自分である。

 

スライドはあくまでプレゼンの補足的な位置づけである。
しかしながら、多くの人がスライドに全てを詰め込もうとする。

 

こんな人を見た事があるはずだ。

 

・プレゼン開始前にスライドのコピーを全員に配布する
・プレゼンが始まると、スライドに書かれた文言をそのまま棒読みで読み上げる
・下を向いたまま、あるいはスライドを見たままで全く聴衆と目を合わさない

 

私は何度も遭遇したし、正直、私自身も入社してすぐは緊張もあってこんなプレゼンを繰り返していた。

 

あなたは、こう思わなかっただろうか?

 

「全部書いてあるから後でゆっくり読もう」

「読み上げるだけなら、スライドいらないじゃん。メールで資料だけ送ればいいのに、、、時間が勿体ない」

 

特に、「あとで読もう」と思った場合、まず読む事はなかったハズだ。
デスクの脇にポイっとやって1週間後には他の書類に埋もれて、連休前の片付けで発見しゴミ箱へ直行、ではないだろうか?

 

スライドに全ての情報を詰め込む必要はない。
むしろ、するべきではない。

 

聴衆の集中力を削ぎ落とし、あなたの存在価値を殺すだけ。

 

プレゼンに全てを詰め込む人はそこに安心感を見いだす。
だって、言うべき事は全てスライドに書いてあるので事前に内容を覚え込む必要がないから。

 

これは裏を返せば怠慢といえる。
あきらかに準備不足。

 

スライドにはスライドの役割があるのと同時に、あなたにはあなたの役割がある。
例えば、声のトーン、身振り手振りなど聴衆にダイレクトに働きかけるコミュニケーションはスライドには出来ない。

 

まず、あなたがいてメッセージを発する。
やはり人間が声と身振りで訴えかけるコミュニケーションが一番、人の意識に働きかける事ができる。
そのメッセージをより明確に鮮明に伝えてくれるのがスライドなのだ。

 

内容を暗記してからプレゼンにのぞむのは大変と思うかも知れない。
しかし、実際は先ほど紹介した手順でストーリー構成にきちんと時間を使っていれば嫌でも内容はしっかり頭に入っているので、思ったほど難しくない。

 

例えば、細かいデータやグラフをどうしても使う必要があれば、そこだけコピーを配布してもいい。
そのページに差し掛かった時だけ「お手元の資料をご覧下さい」と言えばいい。

 

いずれにしても、スライドとあなた、その2つが揃って始め一つのプレゼンなのだ。

 

今まで自分のプレゼンの最中にアクビをされた経験がある人はまず、ここで紹介した点だけでも実践して欲しい。
聞き手は常に集中をするし、その結果、心理的に揺り動かされる。そして聞き終わった後は少なからず変化が生じる。

 

 

最後に

 

プレゼンは準備で決まる。
どれだけしっかりとコンセプトを練って、構成とデザインを洗練させたかで刺さり方が全く違う。
刺さらないプレゼンは意味がない。

 

今回紹介した方法はごくごく基本的なもの。
しかし、多くの人はできていない。

 

特に社内向けのプレゼンとなると途端に手を抜く人がいる。
やりたくないけど形上だけやっている、みたいな人が多い。

 

これはすぐに止めるべき。

 

社内プレゼンは格好の練習試合といっていい。
失敗しても、「すんまへん」で済む。

 

スライドのシンプルさや、構成、話し方、身振り手振りなど、場数をこなすだけ洗練されていくもの。
だからこそ社内プレゼンこそしっかりと準備すべき。
そこで聞き手の反応がどれだけ引き出せているか、どれだけ刺さっているかを肌で感じながら改良をし、引き出しを増やして行けばあなたのプレゼンをあなたの代わりにできる人は社内からいなくなる。

 

 

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