文系な人の敵、それは分析業務。
私は正直、大学の時は文学部で英語ばっかやってた「ザ・文系」な人間。もちろん数字に弱くて、就職してからは「数字を使う業務」が大嫌いで苦労しました。
例えば営業月報。手元にある売上げ実績データを眺めながら、「んー、、、とりあえずグラフにしてみっか」つって。で、そっから何も浮かばない。
とはいえ、何かしら書いて空欄を埋めないといけません。「先月のオーダーが多かったので、客先の在庫増加により今月は減少」とかしょーもない報告を無理矢理あげる。分析をして対策を講じるっていう本来の目的から逸脱して、「上司にそれっぽい報告をあげてその場をやり過ごす」のが目的になってちゃってました。
そんな経験ある人、結構多いんじゃないでしょうか?(笑)
もう少しまともな分析スキルがあれば、もっと有意義な報告を上げられるのにー。
もっとエクセルを使いこなせれば、もっと深い洞察をデータから得られるかも知れないのにー。
そう思ってながら、苦手意識が先行して腰を据えて勉強する気が起きない。
なんかよく分からないけど、やたら高度なエクセル知識とか必要そうで学ぶ気になれない。
これは私自身が過去に思ってた事。
似たような状況にある人にオススメな本があるので、紹介をば。
日産という「仕組み」で動く巨人
日産を知らないという人はいないと思います。
ですが、日産に対してどんな印象を持っているでしょうか?
古くからある大手日系自動車メーカーだとか、電気自動車出してるメーカーとか、矢沢永吉が「やっちゃえ日産」つってるとか。色々とあるかと思いますが、私個人としては、自分が日産の人と仕事をした経験もあって、凄く「合理化」が進んだ会社という印象を持っています。
ゴーンさんがルノーからやって来てコミット経営によって見事なV字回復をしたのは周知の通りですが、彼らを強くしているのは技術力もさる事ながら、それと同じくらい彼ら独自の課題解決ツールによるところが大きいと感じます。彼らほど「仕組み」で動く組織もなかなかありません。
V-UPという言葉を知ってるでしょうか?
日産独自の課題解決ツールで、関連書籍もいくつか出ていますが、コンサル会社の人が使うフレームワークを複合させたようなものです。日産では社内ミーティングでは勿論そのツールを共通言語・共通フレームワークとして課題解決を計るのですが、それだけじゃない。日産が面白いのは、そのV-UPという独自ツールを他の企業にコンサルを派遣して導入の手伝いをするビジネスを行っている点です(参考サイト→http://www.nissan-global.com/JP/CONSULTING/V-UP/)。
自動車業界はもの凄い速度で新車開発を進めるので、同時進行でいくつもの課題を解決しながら仕事をしないといけない。
そんな環境でしっかり実績を作ってきたツールがV-Up。
今回紹介している本には、そんな日産で培われた課題解決の仕組みと意思決定の為の分析スキルが凝縮されているので、一見の価値アリです。
数字アレルギーな文系脳でも「標準偏差」が分かるし、「散布図」も使ってみたくなる
標準偏差、ヒストグラム、散布図、、、ん〜、、、なんか聞いた事あるけど、よく分からない人って結構多い。
「え?あぁ、、、あれね。あれはちょっと私にはまだ早いかなーって、、、もうちょっとお互いの事分かってから、、、ね」つって。
私は前の会社で、海外の客先に毎月提出する「品質管理レポート」を英訳する仕事をやらされた事がありまして。そこでヒストグラムとか少しカジッたんですけど、今ひとつピンときてないところがありました。
そこから数年経って、「ヒストグラム」って言葉すら耳にしない日々を送ってたんですが、最近になって骨の折れる分析業務を上司から投げつけられた関係で久々に思い出しました。でも、上手く使えないから困ってたところでこの本。
今までは「なんとなく分かるけど、、」ってゆう霧がかかったような感じだったのが、スッキリしました!
勢いあまって散布図とかも使ってみたりして。
つまり、ガチガチな文系な私でも理解できたし、実務できちんと使えたという事です(笑)
文系脳でもスルスルと入ってくるので、安心して学べます。
これはデータサイエンティストによる「お作法」の本ではない
データ分析スキル関連の書籍ってそれこそ無数にあるんですが、文系な僕ら にとっては結構ハードルが高い訳です。頭痛をこらえながらどうにか読んだとしても、待っているのは「へー、、でも俺の仕事には使えないかなぁ」って感想だけ。。。
何故なら、分析系の書籍は分析の専門家(データサイエンティストによって書かれたものばっかりで、
・理屈ばっかり並んでいる(エクセルの小難しい分析ツールを数式で説明された日には、こっちはもう吐いちゃうレベル)
・分析をする事がゴールになってしまっていて、そこから先が無い
っていうのがあまりにも多い。
だから、そもそも読むのが苦痛だし読んだところで仕事に活きてこない。
その点、この「日産で学んだ〜」は秀逸。
冒頭で著者が明言してる通り、これは「実務家(ビジネスパーソン)」に向けて、
・限られた時間の中でデータを集め、分析し、問題を特定する
・そこから有効と思われる打ち手を講じて
・データに語らせながら説得力全開で上司にGoサインを出させる
っていう、僕らがまさに必要なスキルを身につける為に書かれたものだから。
僕らの仕事は、
・データを棒グラフや折れ線グラフにする事
でも
・それを見せて「増えました」「減りました」っていう当たり前の事を報告する
ワケでも
・「こうしたらいいと思います」っていう感覚的な打ち手を提案する事
でもないはずです。
きちんとデータからストーリーを見つけて、データに語らせながら、打ち手の効果も論理的に説明して意思決定者を納得させGoをかけさせる。
それがやらなきゃいけない事です。それを念頭に置いて書かれた本書は、どの分析スキル書籍よりもアナタの仕事に直結し易いハズ。
それに、実際の仕事では上司や役員のGoを取り付けるのってそんなに簡単じゃないですよね。
普通の分析スキル本はその辺のサラリーマン事情が全く踏まえられてないんですよ。高度な関数やら分析ツールの使い方をご高説したあげく、
「こんな新しい視点が持てるんだぜ!常識に捕われるなよベイベー」で終わり。
「いや、それは分かるけどよ、それを実行するのはそんなに楽じゃないんだよコノヤロー」って。本著者はそういう苦労を踏まえた上で書いているので、「そうそう!」ってな具合で自分の仕事に当てはめてイメージしやすい。
つまり、その辺にある頭でっかちな「お作法」の本とは一線を画していて、アナタの仕事に即効で活きてくる事が期待できます。
読めばアナタも、すぐに使ってみたくなる分析スキルがいくつか見つかると思います。
今までは「苦手だ」と思っていたのがウソのように、「使ってみてぇ、、」って思えてくる(笑)。
あとがき
私自身、この本を読む中で覚えた小技を既にいくつか使っています。それも、さも昔から知っていたかのように(笑)
参考になるか分かりませんが、2つほど例を挙げますと、、、、
為替リスク検証 〜 「平均値」なんて当てにならん
海外に製品を販売するメーカーの方なんかはピンとくると思いますが、海外にモノを売る時(買う時もですが)には常に為替がつきまといます。まず、円で買ってくれる客なんて自社拠点を除いてそうそういない。
そこで営業は見積もりをする時に悩む訳です。
会社として為替に関する見積もりルールが定められていれば別ですが、実情は、見積もりをする度に鉛筆をナメナメしながら、「1ドル100円かなぁ、、、いや、、、でも80円までいった事もあるし、、、」なんつって結局は「感覚」で価格をはじく事が多い。私も前の会社では外貨で販売する時は頭を悩ませました。
為替に余裕を見る、つまり、実際は1ドル120円くらいなのに対して、1ドル100円で見積もりをすれば販売価格は高くなるワケです。
要するに、為替リスクを排除しようとすればするほど価格競争力は落ちていく。このトレードオフがあるから営業としては悩ましいんですね。価格が上がれば受注できない。でも損をしては元も子もないんですから。
で、今回私がやったのはドルでもユーロでもなく、ブラジルレアルとかインドネシアルピーとか「え?」って言いたくなる通貨。
もう、振れ幅ハンパない(笑)
そんな危ない通貨で売る上でどこまでリスクを許容するのか。
商社ですから、正直為替で儲ける部分もあるワケです。
それを検証するのに役立ったのが本書の「平均値は代表値ではない」「平均値をむやみに使うのは危険」という部分。
単純に過去数年の実績の平均値から「この通貨は3ヶ月間の間に平均で◯◯%変動するリスクがある」とするのは実はリスクヘッジになっていなかったりするわけです。じゃあ、最大値だけ見て「この通貨は過去の実績から3ヶ月の間に20%変動するリスクがあるので20%分のリスクを載せましょう」とすれば価格競争力もへったくれも無くなってしまいます。
この場合、本書で学んだ「分布」の考え方が活きてきます。「20%も変動するっつーけど、それってどれくらいの頻度なんだい?」って事です。
もし数年に一度しかそんな瞬間最大風速が無いのであれば、価格競争力の維持から考えて20%を織り込むのはベストな方法では無いかも知れません。それよりも、データが10%くらいの変動幅に集まっているなら、10%を織り込めばそれなりにリスクは回避できて、価格も抑えられると考えました。なので、5%織り込めばリスクは◯◯%、7%を織り込んだなら、、、という検証をして妥当性のある数字をはじいたワケです。
為替なんて、結局は”ミズモノ”なので誰にもどうなるか分かりませんけどね。
でも、見積もりの承認を上司から取り付けるには、ある程度ロジカルな根拠があるか、そうで無いかでかなり変わってきます。
◯◯がいくらなら、価格は、、、のシュミレーションもわずか数クリックで
これも見積もりと為替の話。
1ドル100円としたらいくらか?
1ドル110円としたらいくらか?
じゃあ、115円なら?120円なら?、、、、
といったシュミレーションをして、値ごろ感を見ながら為替を決める場合があります。
そういう時にいちいち為替レートを代入するのは手間がかかります。
その時に役立ったのが、回帰式。
つまり、為替が◯◯円上がれば価格は◯◯円下がる、という関係性をy=ax + bという中学で習った数式にするもの。
完全にピッタリにはなりませんが、かなり高い精度が出せます。
いちいち代入する手間がなく、数式をベーーーッとコピーすればそれぞれの為替レートに対応した価格が瞬時に出せる。
これは私としては凄く便利でお気に入りの小技の1つになりました。
別に見積もりに限った話ではなくて、広告費の実績と販売実績のデータを用意して、「広告費が1万円上がると売上げがいくら上がるのか?」みたいな計算にも使えます。
そんなこんなで、私はこの本で覚えた事を早速使っちゃってます。
ビジネス書は。いくら良い事が書いてあっても。自分の仕事に即効性があるものって少ないですよね。でも、この本は珍しく、すぐに役に立ってくれました。
以前の私と同じように、数字やデータ分析に苦手意識を持っている人も、「日産で学んだ〜」を読むだけで、ビジネスの実務レベルで見たときには十分な土台は作れるんじゃないかなと思います。
コメント