前回、英語学習には
“英語力”を鍛えるもの
と
“試験力”を鍛えるもの
この2種類がある事をお話ししました。
現実問題として多くの人が両者を混同していて、後者のみ頑張った結果、TOEICで成果が出ずに挫折している事も。
特に、英語力に裏打ちされていないTOEIC対策はチェーンの外れた自転車を頑張って漕いでいるようなもので、テクニックだけが空回りしてスコアに繋がらないっていう話でした。
英語力と試験力の両輪のギアがかみ合って伸びていきます。
じゃあ、英語力も伸ばせばいいじゃない。
となるワケだけど、ここで失敗する人が多いので注意が必要です。
ある点を変えるだけで、学習効率は劇的にUPします。TOEICスコアも上がります。
高いお金を払って英会話教室に通うとか、特別な講座を受けるとかではなくて自分でできる事ですが、あまり意識されない部分なので、重点的に紹介します。
学校英語というステレオタイプとの決別
英語学習を始める時に、こんな順番で勉強をしてないですか??
・まず、英単語帳を使って語彙を増やす
・問題集で文法を再確認していく
・読解やリスニングの問題集をやる
これは、私達が受験生時代にやった一つの典型的な勉強方法かなって思うんですけど、どうですかね?
それで、大事なのが、今もこの受験英語スタイルで英語を学習していたら一旦やり方を見直しましょうってコトです。
この方法は受験英語だから通用したもので、英語の本来的な学習方法としては王道でも何でも無いです。だって、、、、その証拠に、当時あれだけ勉強したのに英語なんてちっとも話せやしないじゃないですか。私も大学に入学した時全然話せなかったですし。
ちょっと当時を思い出して欲しいのですが、受験英語の問題って、、、
・文法問題(短い文章で空欄補充的なやつ)
・長文問題(内容と一致してるのを次の1〜5から選べ、とか、下線部を和訳せよ、とか)
が中心で、志望校によってはリスニングがあったり、なかったり。
今はセンター試験でもリスニングが導入されて久しいけど、今の30代が現役受験性だった頃はセンターにリスニングもなかったし、私大もリスニングがないところがあった。
あっても、全体のウェイトは少なかったですよね。
だから必然的に受験生の英語学習は、単語、文法、読解、英作文なんかに異常にウェイトを置いたものになっていたんです。
こんな方法では、耳は鍛えられない、話す事もできないのは当然なんです。
でも、TOEICはリスニングが全体の半分ときている、、、。
それでどうやって高得点取れっていうんだ!って話です。
一体どうやって、英語力を高めながらTOEICスコアを上げろというのか。
ただ、当時学んだ事がムダだったワケではないです。
特に文法知識は強い武器。
今はボンヤリとしか覚えていなくても、やり直せばすぐに蘇ってきます。
社会人の英語学習2.0 〜 最新のマインドセット
ここ数年で英語学習環境は劇的に変わりました。
PCがあれば辞書はいらないし、Skypeを使って英会話もできるし、スマホアプリを使って勉強できる。
一方で、これらの技術的な進歩とは別に、英語学習法に対する考え方についての変化がおきつつあるかなと。
で、それこそが、時間の無い社会人の英語学習には大切なポイントなんです。
それは、勉強の優先順位。
先ほどの
・まず、英単語帳を使って語彙を増やす
・問題集で文法を再確認していく
・読解やリスニングの問題集をやる
これがTOEICに不向きなアプローチであるコトは説明しました。
1. 発音
2. 文法
3. 音読
この順番がベスト。
一般的な独学スタイルと大きく違うのは、”発音”に重きを置いているところ。
実際、発音の練習を後回し、というか、全くしない人が多いんです。
しかし、実は発音こそ最初にやってしまうべき。
これが英語学習のスタンダードになってきてます。
発音はまず音の”インストール”から。
発音を最初にやるという事に違和感を覚えたかも知れないですね。
一般的には英語の初心者に対しては、
“発音なんて気にしなくていい。どんどん話そう!”
というアドバイスがされますしね。
でも、このアドバイスは正論のようでそうではないんです。
確かに、外国人と英語で話さないといけないシチュエーションでは発音にコンプレックスを持ってオドオドする必要はないです。
ただ、発音を練習しなくていい、という事とイコールではないんです。
中学・高校では本格的な発音の授業はやらないのが殆どです。
というか、音声学の訓練をきちんと受けて教え方を学んだ英語教師なんて日本の中学・高校には殆どいないですし。きちんと体系的に教えられる人がいないんです。
こういった背景もあって、あまりに多くの人が発音から注意を逸らしているんですよね。
英語らしい発音は帰国子女や留学経験者という特権階級だけのもの、くらいに思ってたり。
でも、初心者こそ丁寧に発音の練習をするべきです。
発音の練習をする事によって、その後の学習速度が10倍違ってくるからです。そう、ここが今回の記事の最大のポイントでして。
まず、リスニング。
リスニングの力を付けようとして、リスニング用の教材を聞き流そうとする人がいます。
通勤中にリスニング教材を聞いておけばそのうち耳が慣れるだろう、という希望的観測。
残念ながら、耳が英語に慣れる事はないです。
何故なら、人間の耳は自分で発音できない音を正確に聞き取れないから。
例えば
but(しかし)とbat(野球のバット・コウモリ)
この2つの単語は明確に音が違います。
しかし、日本人にはどちらも”バット”と聞こえます。
文脈に頼って判断をしているだけで、音を正確に聞き分けているワケではないですね。
butとbatを取り違えるような文脈は滅多にないでしょうけど、中にはそうでないケースもあります。
その代表が
canとcan’t
特にアメリカ英語の場合、can’tの最後のtが消失して発音されるケースが多いです。
カタカナにするとどちらも”キャーン”に聞こえます。
実際、canとcan’tを聞き分けるのは”tがあるか無いか”、ではないんです。
だって、どっちにしろtの音は無いんですもん。
会話ではcanのaの発音の強さで聞き分ける人が多いです。
(can’tの方がエとアを混ぜた音(æ)の発音が強い)
じゃあ何故ワタシにはそれが聞き取れないの!?
答えは単純で、英語には日本語に無い音が沢山あるからです。
あなたの脳には”æ”や”θ”といった音は生まれつきには備わっていないんです。
その時に何が起るかというと;
hot /hɑ’t/
も
hut /hʌ’t/
も
hat /hˈæt/(アメリカ英語)
も全て”ハット”で脳が処理しちゃう。
何故なら、ɑもʌもæも、対応する日本語の音は”ア”しかないから。
脳は”知っている中で一番近い音”で代用してしまいます(カラオケの洋楽の字幕についてる振り仮名みたいなイメージが近いです)
発音を練習する目的は、これらの音に対して正しい対応先を脳に作ってあげる事。
そうすれば、hatとhutは明確に違う音として認識されます。
音を正確に聞き取れる、という事は言うまでもなくリスニングで圧倒的な強みになりますが、それだけでなく会話でも伝わる英語になるコトは言うまでもないですね。
音読についての注意点
発音と音読との関係性。
よく、音読をしても効果が出ない、という人がいます。
これは発音の基礎が全くできていない場合が多いです。
ただ耳から入ってきた音をそれに近いカタカナに置き換えて、口から発声しているだけになってしまっている。これは時間のムダ。
私が発音からやるべきだ、というのはココに理由があります。
最初に発音をしっかりやっておけば、音読の質が高まり、リスニングの力も伸び悩まずに突き抜けるからです。
朗報なのは発音は思ったほど身につけるのに時間がかからないんですよ。
1ヶ月も集中的にやればかなり違ってきます。自覚症状アリアリで違ってきます。ホントに。
文法というコード
英文法とは、コードであり、数式であり、ルールである。
by 私
いくら発音を練習しても文法が分からないと意味が分からない。当たり前ですね。
英文というのはつまり、リスニング/スピーキングの観点から言えば、音が集まってできた単語が”文法”というルールに従って並べられて始めて意味を成すわけです。
音だけ正確に聞き取れても、それはただの音の集合体で、何か意味を成すワケではない。
文法と聞くと鳥肌がたつほど拒否反応を起こす人もいるが、実は朗報の方が多いんです。
まず、先ほど言ったように、日本の学校教育はかなり文法、読解、和訳に偏ったもの。
裏を返すと、私達は学生時代、かなり文法をやらされていたんです。
日本人は英語ができない、とよく言われますけどそれは会話での事。
実際、仕事のe-mailなど、「きちんとした文章」を書く点においては日本人のレベルは高いですよ。
仕事のメールとか東南アジアの人とか、東欧の人の英文って伝わるけど文法ミスが多いですよ。ホント。
つまり、私達実は高い水準で文法を身につけてるんです。
次に、文法は大人の英語学習でこそ強い武器となる事も大事です。
子供と違い、感覚的に英語を身につける、というのは難しいです。もう純正バイリンガルにはなれない。
でも、その代わり、文法というツールで理論的に体系的に英語を学べるんです。それは大人にしかできないコトで、逆に小さい子供にはできません。
あとは、TOEICの文法って、かなり単純なものが多いという事です。
大学受験で出て来るような”一生使わない”知識は必要ないですから。
私は大学を卒業してからずーーーっと海外営業職に就いているけど、”No sooner had 主語 過去分詞 than 主語2 過去形”なんて使った事もないし、ネイティブ含めて誰かが使っているのを見た事もないですし、そもそも、メールでこんな構文使われたらウザイ。
そして、こんなものはTOEICでは殆ど出ないです。
だから文法に関してはTOEIC対策用の文法問題集を1冊仕上げればそれで十分です。
間違っても、ForestやNextageのように受験生用のものを使わないで下さいね。
説明が分かりにくいし、TOEICには向かないです。使われる単語の分野もかなり違うので、遠回りになっちゃいます。
ツールだけでなくソフト面もアップデートさせる
英語学習環境は目まぐるしい速度で変わってます。
色々な学習ツールが登場しています。ウェブサイト上で色々学べるサイトとかアプリとか。
ただ、ツールが進化してもそれだけで劇的に学習効果が高まるワケではないです。
何を使うか?に気をとられがちですが、それ以上に「何から使うか?」「どう使うか?」が問題です。
書店にいくと、発音関連の書籍が増えた事に驚きます。
“英語耳になる方法”だとか”キレイな発音を身につける”といったテキストが沢山あるんですよね。私が英文科の学生だった10年前くらいには、こういった類のものは殆ど無かったんですよ。味気ないフォニックス(音声学)用の専門テキストくらい。
それだけ発音の重要性が認識され始めてます。
昔は発音というのはネイティブの英会話講師に指導して貰う、というのが主流でした。でも、ネイティブだからといって、発音をきちんと教えられるワケではないんですよね。
私達だって外国人に日本語の発音を体系的に教えられないじゃないですか。それと同じ。
人間は母国語の発音は小さい頃に理屈ではなく感覚で身につける。
だから、”できるよ、だけどやり方は説明できない”となるんです。
必要なのはネイティブスピーカーのお手本ではなく、音声学のノウハウに基づいたトレーニング。アメリカの大学で留学生向けに使われる発音トレーニングも、日本の大学の英語系学部で使われるものも基本的には音声学のノウハウをベースに作られてます。
“もっと舌を巻いて!”
”歯の先に舌をあててスーッ”
って感覚的なレベルではなく、きちんと音を分類し、舌のポジションを体で覚え、実際の会話での音の繋がりや消失についても学ぶ。それが音声学に基づいたトレーニングです。まあ、こう書くと難しいですが、実際トレーニング自体は体で覚える部分が大半で、教材も楽しいものが多いです。
発音を上達させる参考書としては、「英語耳」が鉄板なんですけど、私的にはこっちの方がもっと面白いし、楽しみながらできる!っていうのが一冊あるので最後に紹介しておきます。ただ、アメリカ英語が非常に強いです。お上品な英国式をたしなみたい方は「英語耳」がいいかなと。
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