やはり、TOEICが転職において有利になるのは800点からと考えるのが妥当だ。

転職でTOEICを武器にするなら800点は欲しい。その理由とその難易度についてお話します。キャリアアップのためにTOEIC学習に本腰を入れようかと考えていても、不安も出てきます。

  • TOEICは本当に転職で武器になるのか?
  • 何点くらいで転職に有利に働くのか?
  • どのようなポジションに応募できるのか?
たかぎぶそん

不安が残った状態だとアクセルを踏み込めませんよね。

この記事では、現在の転職市場でのTOEICのリアルな評価を明確にしながら、800点が重要なボーダーとなることを説明します。


私自身はTOEIC900点を取得しつつ何度か転職をしていますので、実体験として「TOEICはどの程度転職に有利に働くか」を冷静に把握しているつもりです。歯に衣着せぬ言い方になってしまいますが、転職エージェントや英会話スクールが発信している情報は、古いものも多く、実態をとらえているとは言い難い印象です。

ご自身でTOEICハイスコアを取っている転職エージェントは少なく、英会話スクールの講師もビジネスの現場で英語を使用した経験がない方が多かったりします。

転職に向けて英語を頑張りたいけれど不安があり踏み出せない人はぜひお読みいただければと思います。

目次

転職で英語を武器にするならTOEIC800点が目標であるべき

まず本記事の結論としては「英語力を武器にキャリアアップを狙うのであればTOEIC800点を目指すべき」となります。


英語で不自由なく仕事をこなせるのは800点から


やや古い資料にはなりますが、2019年にIIBC(TOEICの運営会社)が公表したレポートによれば、企業が国際部門に期待するTOEICスコアは750点という結果でした。

出典:IIBC TOEIC Program Data & Analysis 2019
国際部門とは?

海外事業部など、海外拠点や海外顧客とのやり取りが頻繁に生じる部門をさします。企業により海外事業部、国際事業部、貿易部など呼び方はさまざま。

ただし、年々基準は上がっているのが実態で最近は800点を求める企業も増えてきました。私自身の転職活動の経験からもTOEIC800点を目安とした英語力を採用条件に入れている企業は増加しています。



あるいは「英語での業務に支障のない語学力をお持ちの方」といった曖昧な記載もあります。その場合、想定される業務としては下記のようなものがあります。

  • 海外の顧客や子会社とのメール・チャットでのやりとり
  • 海外の顧客や子会社との電話・オンライン会議でのコミュニケーション
  • 英文契約書の取り交わし
  • 海外出張
出典:IIBC 英語活用実態調査:それぞれのスコアのボリュームゾーンに注目


IIBCの英語活用実態調査によれば、ビジネスでの英語の活用とTOEICスコアの関係は上記の通りです。600点未満の人は挨拶ができる程度、600〜800点の人はメールのやり取りができる程度、というのがボリュームゾーンです。一方、800点以上のハイスコアラーは海外出張や海外赴任ができるスキルレベルにあるといえます。


私自身の体感としても、海外との電話・会議を不安なくこなせる自信がついてくるのは800点を超えたあたりでした。英語力を武器として評価してもらえるのは800点からというのは非常に現実的です。

700点 で英語人材と評価される時代は終わった

転職エージェントや英会話スクールの方が書いたWEB記事では「700点あれば英語が得意だと評価されるでしょう」などと書いているものが散見されますが、実態に合っていません。確かに2010年代はまだ「TOEIC700点=英語が得意」と考える企業も多かったのですが、2024年現在、国際部門での募集求人で「TOEIC700点程度」と書いている企業はほぼありません。採用企業側も「TOEICでいえば800点以上ないと円滑な業務は厳しい」という現実に気がついています。

たかぎぶそん

2010年代まではTOEICのインフレが起きていました。ビジネス雑誌でも過剰なまでに「英語ができない奴はグローバル社会で淘汰される」といった煽り記事が量産されていました。

現在は800点ないと国際部門・海外部門への応募はなかなか難しいのが実態です。



TOEIC700点では実務上厳しい面が多々あります。800点を超えてくるとメールでも会議でも出張でも大抵の場面で不安を感じることはなくなってきますので、700点と800点の間には見えない大きな壁があると考えています。


商社時代の求人の話:
これは私の体験談ですが、商社にいた頃はTOEIC800点未満の方は書類選考でお断りしていました。求人というのは、採用部門と人事部が相談して「こんな人を募集しよう」という条件設定をします。転職エージェントから候補者が来ると、人事部を経由して採用部門が面接するかどうか決めます。私のチームで欠員が出た際に書類選考をした時期がありますが、帰国子女などを除けばTOEIC800点未満は実務に耐えられないと判断したためです。

TOEIC800点は独学で十分到達可能なレベルです。留学など必要ありませんので、そのレベルに到達しているかは努力の問題に過ぎません。海外系の部署へ応募にあたって800点未満ですと「もうちょっと頑張ってから応募してきてよ……。」と思われるケースは実際にあります。

グローバル職の求人例


グローバル職(メーカーの海外営業や商社)の求人例を紹介します。採用条件の中でTOEICがどういう位置付けなのかを知ることができます(WEB上で一般的に公開されている案件を参考にしています)。

化粧品メーカー 海外営業職

必須要件
  • 2年以上の海外営業経験(B to B・B to Cいずれも可)
  • 貿易知識
  • ビジネスレベルの英語(メール・プレゼン・契約書締結などを完遂できること)

食料品原料メーカー 海外営業職

必須要件
  • メーカー又は商社での海外営業経験3年以上
  • ビジネスレベルの英語力(TOEIC:800以上のレベルで、英語による商談・折衝が可能な方)
  • 四年制大学卒業以上
歓迎要件
  • 食品メーカーでの業務経験

外資系医薬品メーカー 新規事業担当

必須要件
  • 大卒以上
  • 戦略的視点に基づいた製品企画・開発・事業拡大経験がある方
  • モノ視点ではなくマーケット視点での企画力をもつ方
  • ビジネスレベルの英語力(TOEIC:800以上)

コンサルティング・ファーム(環境マネジメント系の領域)

必須要件
  • 経営視点を持ち、主体的にサステナビリティ課題の解決に取り組める方
  • 実務レベルの英語力(TOEIC 800以上)
  • 事業会社でのプロジェクトマネジメントの経験もしくはコンサルティング・ファームでの関連領域での実務経験
たかぎぶそん

とりあえず800点を取っていれば、英語力の要件で落とされることはあまりないです。

TOEIC 800点は上位16%の貴重な人材

TOEICが公開しているデータではスコア分布は下記の通りです。

スコア全体に占める割合
895点〜4.2%
845点〜4.9%
795点〜6.8%
出典:TOEIC Program Data & Analysis 2023

795点以上の人を合計すると全体の約16%になります。メーカーの海外営業部や商社にいけばTOEIC800点以上の人材はザラにいるのですが転職市場全体で見ると一握りですので、企業側も採用に苦労しています。

たかぎぶそん

商社時代の同僚でもあった妻は890点ですし、少なくとも同僚で700点を下回っている人はいませんでした。

前述の食品原料メーカーの海外営業職ですが、英語力は必須要件でしたが業界経験は歓迎要件でしたよね。当然、企業側の本音としては「英語力も高くて業界経験もある人に来て欲しい」と思っていますが、両方を必須条件にすると応募が来ないという苦しい実情が見え隠れしています。

業界経験より英語力

業界経験がなくとも入社後に教えることは可能です。しかし、語学力は会社がいくら支援したところで本人にやる気がなければ身につきません。なので、「業界知識はなくていいからとりあえず英語ができる人を」という企業も少なくありません。

英語力が重宝される業界・職種



英語力が要求される求人が多い業界や職種を紹介します。

商社 総合職

TOEICの公開データでも商社は常に平均スコアも高く、昇進要件に700点を設定しているなど全体的に高い英語力を求める傾向にあります。大手総合商社は学歴・社歴も大きく影響しますので、TOEICの点数が高い程度では有利になることはありません。ただ、その子会社にあたる専門商社では選考において英語力が評価されやすいです。



実際の業務では、海外の子会社とのやり取りが大半である企業が多いです。基本的には海外子会社を経由したビジネスとなるため、海外顧客との直接のやり取りは意外と少ない印象です。



ただし、定期的な海外出張が発生し、現地スタッフと一緒に客先を回るといった場面は多く発生しますので、英語でのプレゼンや折衝スキルは必要となります。


たかぎぶそん

商社に転職したい方は英語だけでなく貿易知識も身につけましょう。実務経験が望ましいですが、無い場合は貿易実務検定C級をとりあえず抑えておくと◎

日系メーカー 海外営業職

海外に子会社をもつ日系メーカーでは英語をよく使います。超大手メーカーを除けば海外事業部は人手不足であることが多く、「製品知識は入社後に身につけてもらうので、とにかく英語ができる人材が欲しい」という企業が多いです。選考では、30代前半までなら業界未経験でも英語力が高ければ有利になります。


日常的な業務は、海外子会社との納期調整・品質クレーム対応・サンプル手配などが多く、営業と言っても数字を必死に追いかける国内営業とはやや毛色が違い、調整業務が多くを占めます。又、国内営業とは違った意味でのコミュニケーション能力が求められます。


海外営業に必要な力

海外営業は、自社の生産工場・品質管理部門・開発部門・物流部門など多くの人とのやり取りが発生します。特にメーカーは現場と本社の間に壁があり、懐に入っていく「人間力」が意外と重要です。また、海外から来日する顧客のアテンド業務も多発しますので、人と接することが苦ではない人が向いている仕事といえます。

たかぎぶそん

私の実体験ですが、現場(工場)には海外営業を「ちょっと英語ができるからって調子にのってる嫌な連中」くらいに思ってる人も多いので、その壁を越えて味方を作る力が何より重要でした。

物流会社

いわゆる「フォワーダー」と呼ばれる国際物流会社は海外拠点も多く英語力が求められます。ただし、フォワーダーの顧客は国内の商社やメーカーです。大手自動車メーカーや商社は、入札方式で物流業者を決めることが多いので、その入札対応をしたり、単発的なプロジェクトで貨物量の多い案件の受注に向けての営業活動が中心になります。

フォワーダーの営業は辛いよ

フォワーダーの営業は大変です。「請求書をお持ちします」など無理やり口実を作っては顧客に会いに行き情報収集をします。「それがさー、新車の立ち上げが遅れちゃって……。緊急輸送でエアーしないと(=航空便で送達する)いけない部品がたくさん出てきそうでさぁ」といった情報をゲットし、見積もりに繋げます。とはいえ、フォワーダーはサービスでの差別化は難しく、価格勝負になりがちなので厳しい世界でもあります。


良い点は、海外赴任のチャンスが多いこと、通関士の資格が取りやすい環境にあること、給与レンジは比較的高いことです。

コンサルティング・ファーム

外資と日系でやや傾向が違います。


会計BIG4と呼ばれる外資メガファームの場合、TOEICでいうと700点くらいでも大丈夫だったります。海外拠点とのやり取りも多少は発生しますが、メーカーや商社ほどバンバン海外に行く機会はありません。それよりも、海外の現地法や各種法令等をきちんと読みこなす「堅い英語力」の方が重要になります。

たかぎぶそん

部署やプロジェクトによりますが、例えば海外現地の環境規制に関する法規制などを把握して、サプライチェーンマネジメントのサポートを日系メーカーに提供する、みたいな仕事です。

一方で、アビームやクニエなどの日系ファームは高い英語力を求めることが多く、TOEIC850点以上必須というポジションもよくあります。日系の方が高い英語力を求めるのは意外ですよね。顧客は日本から海外に展開している日系メーカーなどが多いです。


ただし、コンサルファームは英語力よりも地頭が重視され、学歴フィルターも強い業界なのでTOEICのハイスコアがすごく有利に働くわけではないと思った方がいいです。

TOEIC600点→800点に必要な学習時間は約400時間

TOEIC800点と聞くと「絶対無理」と思う人もいるかもしれません。結論からいうと、現在のあなたのレベルが全体平均である600点だとすると、必要な学習時間は400時間程度とイメージしておきましょう。「TOEICは100点伸ばすのに200時間」が通説で、私の体感としてもそれくらいです。

たかぎぶそん

あくまで正しい学習方法で頑張れば、という前提です。

下記はTOEICが公開しているスコア別の学習時間の平均です。

出典:TOEIC 英語活用実態調査

800点以上をとる人は週に6時間は英語学習をしているという統計結果です。英語ができる人ほどたくさん勉強しているわけです。ただ、週に6時間は1日あたり1時間未満なのでそこまで大変な量ではありません。仮に1日に1.5時間学習すれば約9ヶ月で400時間になります。つまり、TOEIC800点は1年以内には到達を十分狙えるレンジです。

TOEIC800点を目指すべき理由

・1年以内で到達可能
・誰でも受験できる
・留学する必要もスクールにいく必要もなく、学習費用が安い
・上位16%の英語人材と評価されキャリアアップの強い武器になる

転職においてTOEIC SWテストは不要

TOEIC SWテストは2007年に始まったスピーキングとライティングのテストです。誕生した背景としては、TOEIC L&R(従来からあるTOEICテスト)はリスニングとリーディングしかないので、英語力を適切に測れないという理由からでした。


ただし、就職・転職においては不要です。理由は資格としての認知が低く市場価値が低いからです。



まず、TOEIC L&RとSWテストの受験人口の違いは下記の通りです。

テスト種別2020年2021年2022年
TOEIC L&R553,636名900,694名784,310名
TOEIC S&W
(スピーキング受験者数/ライティング受験者数)
8,403名 / 6,152名1,0741名/7,969名10,394名/7,798名
出典:TOEIC Program Data & Analysis 2023


TOEIC S&WテストはTOEIC L&Rテストの1/10にも届かない受験者数しかいません。受験者数が少なくて認知も低い資格というのは転職市場では武器になりません。「TOEIC S&Wで150点です」と言われても凄いのかどうか企業側もピンと来ませんし、TOEIC S&Wのスコアを採用要件にしている企業は皆無といっていいです。それはつまり、資格として価値が低いということです。

たかぎぶそん

誤解のないように言うと、自己研鑽のためにS&Wテストを成長スケール(物差し)として使うことは良いと思います。あくまで転職市場で評価されるか?というと微妙というお話です。

英語を使う企業で働けば嫌でも英語で話さないといけない場面は出てきますし、結果としてスピーキングやライティングのスキルは自然とついてきます。個人的には転職を目的とするなら、TOEIC L&Rで一刻も早く800点をクリアする方が費用対効果は高いと思います。

これからの時代も英語は必要? → はい、必要です。

現在はAIの活用が企業や行政で進んでいるので、「英語スキルはもう不要になるのでは?」という意見も一部でありますが、英語スキルが不要となることはありません。


確かに、翻訳という領域ではAIが活躍するでしょう。そのため、翻訳産業が衰退することはほぼ確実視されています。日本は歴史的にも翻訳技術を発展させて海外の知識・技術を取り入れてきた背景があります。映画には邦題がつき吹き替え版が用意されます。そういった背景から、翻訳に過剰に慣れ親しんでいる国民性のようなものがあり、「自動翻訳があれば英語力はいらない」といった短絡的な発想につながりがちです。しかし、ビジネスの現場で全てのやり取りを翻訳するなど現実的ではないですし、生産性が低いです。


AIは協力な補助ツールとはなりますが、根本的に英語力の必要性を消し去ることはできないというのが現在の見方です。

グローバル化は2.0へ

以前はよく「グローバル化だ!」と叫ばれていました。


しかし、それは日系企業が海外に進出するという意味でのグローバル化でした。1990年代から日系企業は人件費の安い海外に生産拠点をつくり、コスト競争力を高めることに腐心しました。当時のグローバル化は「日本に本社があり海外に子会社がある」という構図の中で、日本がコントロールする立場にありました。



ですが、日本の立場は変わりつつあります。
台湾の半導体メーカーTSMCが熊本に工場を作ったことは話題になりました。現在日本は「安価で質の高い労働力を確保できる場所」になりつつあります。



電気自動車は中国のBYDや米国のテスラに先を越され、家電は韓国製品が勢いを増しており、スマホに関しては日系メーカーは見る影もありません。もはや「日本の技術力」「Made in Japan」というブランドは失墜しつつあります。このまま日本企業の衰退が進み、より多くの外資系企業が日本に進出すれば、外資系企業で働くことが当たり前の時代がきます。そこでは英語は特別な力ではなく当たり前のスキルでしょう。



環境は変われど、英語力が必要ということには変わりないと考える方が自然です。変化の激しい時代ではありますが、英語力は必ず大きな資産になります。ぜひ頑張りましょう。

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