前回はTEDが何故、社会人の英語学習ツールとして優れているかについて書いた。
そして、今回はその使い方。
繰り返しになるけれど、まず前提としてTEDは英語学習用に作られたコンテンツではない。
価値ある情報を世界に向けて発信する動画コンテンツである。
つまり、
ポジティブに考えれば、自分の好きなように英語学習に活用できるし、
ネガティブに捉えれば、自分で学習方法を考えて確立しないといけないので、仕組みを自分で作らないといけない。
特に語学習を始めたばかりの人の場合、「TEDが凄くイイから英語の勉強に使いなよ」と言われても使い方がピンとこないかも知れない。
実際のところ、
・映画を使うといい
・英字新聞を使うといい
・小説を読むといい
といった類のアドバイスには、初心者は注意をした方がいい。
そもそも使われている英語が難しいという問題もあるけど、一番の問題は「学習での使い方」が決まっていないという事。
先ほど言ったように、そもそも英語学習用のツールではないので、参考書のように「本書の使い方」なんて載ってない。
英語学習を長く続ける上級者は、自分に合った学習スタンスが固まっているので、使い方を教わらなくても「どう使えばいいか」はほぼ直感的に分かる。
だから、
「TEDいいよー」
とか
「英字新聞を毎日読めば嫌でも語彙力はつくよ」
なんて言うワケだけど、それを言われた初心者の人は「英語ができるコイツが言っているんだから間違いない!」と感じて早速チャレンジするけど、全然ワケ分からなくてヤメてしまう。
「ああ、、、オレには早過ぎた」と思ってしまうんだよね。
そりゃそうだよ、
やり方を知らないで、まともに英字新聞を読もうとしたら、1記事読むだけで何時間もかかるかも知れない。
全部の記事を読もうとしたら何日もかかる。
それで心が折れるのは当たり前。
TEDだって、使い方を考えずにただ動画を見ていたって、英語学習としての効果は無いし、「、、、全然わかんねぇ、、、俺には無理」ってなるよ。
人からイイと聞いて、考え無しに飛びつくと大体こーゆー事になるんだよね、英語学習ってのは。
冷静に考えれば当たり前なんだけど、「英字新聞は英語学習にイイ!」って言ってる人だって、決して「分からない単語もなくスラスラ」読めてる訳じゃない。
だって、それなら読む意味ないし、英語力のトレーニングにならないじゃない。
つまり、英語学習は筋トレと同じで、ある程度の負荷は絶対に必要という事。
そして、英語が伸びるかどうかは、自分のレベルにあった負荷を上手く調整する術を身につけるかどうか、にかかってる。
さっきの英字新聞で即効挫折パターンの人は、初心者なのにジムでいきなり一番重いバーベルを上げようとしてるのと同じ。
いきなり上級者と同じ事しようとしたって、無理に決まってる。
TOEICの参考書なら心配する必要もない。
だって、目標スコア別に分かれてるモノが多いから。
自分のレベルが当てはまるものを買えばそれでいい。
だけど、英字新聞、映画、ドラマ、小説、動画、ニュース、といった英語学習用に作られていないもの、つまり「素材」でしかないものは、
自分で使い方を工夫しながら負荷を調整しないといけない。
例えば、ダイエットをしようと思った時に、高いお金を払ってジムに通えば、トレーナーがあなたに合ったトレーニングメニューを作成してくれるので、あなたは決められたメニューをひたすらこなしていけばいい。
一方で、自分で好きな時にジムに行って好きなマシンを使ってトレーニングする場合、あるいはジムにも行かずに自宅で筋トレをしたり近所をランニングする場合は自分でトレーニングメニューを考えないといけない。
英語の学習も同じで、高いお金をかけてスクールに通えばテキストも揃っているし、カリキュラムも予め組まれている。
だけど、独学で、さらにTEDやニュースのような無料ツールを使って学習しようとすればお金はかからないけど手間はかかる。
誤解の無いように言っておくと、お金をかけた方が「勉強法を自分で考えなくちゃいけない煩わしさが無い」というだけで、決して「そっちの方が効果がある」という話ではない。
お金をかけても伸びない人もいるし、無料のものを中心に学習をして英語を身につける人もいるからね。
ただね、TEDは動画によっては日本語字幕も出せるし、スクリプトだって手に入れられる。
つまり、英語学習に必要なものは揃っているというワケ。
前置きが長くなったけど、本題の使い方について。
1. 好きな動画を選ぶ
まずはTEDのページへ。
トップページでは新しくてview数が高いものが表示されるので、迷った時はとりあえずトップページに表示されているものから選んでもいいかも知れない。
もしくは、有名人の動画を選ぶというのも一つの手。
例えば、
ジェフ・ベゾス(Amazon創始者)
ビル・クリントン(元アメリカ大統領)
ボノ(U2ボーカル)
などなど、沢山の有名人がスピーチをしている。
もし見たい動画が決まっている場合や、興味のあるジャンルがあれば検索をしてみよう。
例えば、”Marketing(マーケティング)”で検索してみる。
検索結果が表示されたらその中から好きな動画を選ぶ。
この時、英語学習に使う為、次の2点に気をつけよう。
・動画の長さは20分以内
個人的な感覚だけど、20分以上の動画は英語学習の素材としては長過ぎる。
知らない単語を確認したり、文法的に分からないところをチェックするといった作業にも時間がかかる。
さらにその後に音読をするワケだけど、20分を超えてくると正直しんどい。
30分の動画を使うなら15分の動画を2個こなそう。
何故なら前者の方が圧倒的に投げ出す可能性が高いから。
・話すスピードが極端に速く、発音が明瞭ではないものは避ける
TEDという場でプレゼンをしている人で「発音が不明瞭」という事はあまりない。
プレゼンでは明瞭な発音が不可欠だし、そういったトレーニングを受けている人が多い。
たまに、モゴモゴ聞き取りにくい動画もあるので、そういったのは避けよう。
それ以上に、話すのがメチャクチャ速い人が多い。
特に初心者の人は、最初のうちは話すスピードが遅いものを選ぼう。
・日本語のSubtile(字幕)が無いものは避ける
字幕の表示のさせ方や使い方は後で詳しく説明するけど、動画によっては日本語訳の設定がないものがある。
中国語の字幕はあるけど、日本語はない、とかね。
最終的にはきちんと意味を理解しないといけないので、初心者の方は日本語字幕が設定されていない動画は避けよう。
解らなかったとこが解らないままになってしまうリスクが高い。
2.動画を見る
まずは動画を見よう。
ただし、注意点としては、字幕。
画面右下に”Subtitles”のアイコンがあるので、そこから選べるけれど
最初から日本語字幕で見るのはヤメよう。
どんな英語教材でも言えるんだけど、いきなり日本語字幕とか日本語訳を見てしまうのは英語が伸びない人の共通点。
これ、クセになっちゃうんだよ。
英語を聞いていて意味が分からなくても、「日本語訳を見ればいっか」と考えるクセがついてしまうと、音声を聞いていても緊張感が全く無くなってしまう。
その状態で聞いている英語なんてただの雑音だからね。
きちんと集中していれば聞き取れたハズの単語も聞き取れないというのは本当によくある。
TEDの場合、スピーカーの身振りや手振りに加えてプレゼンのスライドも理解を助けてくれる。
まずは最低5回は字幕なし、もしくは英語字幕で見よう。
ここをすっ飛ばして最初から日本語字幕で見てしまうと、その時点で英語学習効果は無いと思った方がいい。
映画館でポップコーン食べながら日本語字幕で見ているのと変わらない。
先ほども言ったように、英語学習にはある程度の負荷を自分にかける事が必要。
だけど、「日本語訳を見ればいいや」というスタンスでは全く負荷がかかっていない。
しっかり集中して可能な限り聞き取る努力をしよう。
最低5回を繰り返したら、最後に日本語字幕で見て内容をしっかり理解する。
3. スクリプトを確認する
次にスクリプト(原稿)を入手しよう。
先ほどの”Subtitles”の隣に”Transcript”というアイコンがあるので、そこをクリック。
そうすると動画のスクリーンの下に原稿が表示される。
これをワードなどにコピーしてプリントアウトする。
日本語訳のスクリプトも欲しい人は左の”Select language”で”Japanese”を選択すれば日本語になる。
ただ、全ての動画に日本語が設定されているワケではないので注意。
ここからの作業は僕らが中学・高校でやったリーディングに似ている。
つまり、長文読解のような形で内容をきちんと理解していく作業になる。
・知らない単語は全部調べる
当たり前だけど、サボる人が多い。
知らない単語は全部調べないと当然だけど文章の内容は理解できない。
単語を調べる時のコツなんだけど、まず手持ちの単語帳(TOEIC用とか)の索引に載っていないかを調べよう。
もしその単語帳に載っていれば、それは「知らなアカンやろ」という単語なので、しっかり覚えよう。
私の場合、プリントアウトした原稿(英語)で知らない単語は全部マーカーを引く。
そのうち、自分が使っている単語帳に載っているものについては単語の下に日本語の意味を書き込まないようにしてる。
何故なら、記憶に残らないから。
音読している時に、下に日本語訳が書いてあれば無意識にそっちを見てしまうので、分かった気になってしまうんだよね。
一方で、専門用語(例えば長ったらしい病名とか)については、覚えるつもりもないので下に意味を書いておく。
・文法の構造をしっかり理解する
代名詞(itとかthatとかheとかherとか)は何を指しているのか、主語は誰になっているのか、そういった点について疑問が残らないようにしっかり精読しよう。
TEDの原稿は当たり前だけど、喋っている内容を文章にしたものなので、色々と省略されている事が多い。
この2点をきっちりやろう。
この次に音読となるワケだけど、読解レベルで意味が分かっていないものを音声のスピードで音読しても当然意味分からないままだよね。
だって、ゆっくり読んでも分からないものを速いスピードで読んで分かるワケないじゃない。
よく「英語の音読で効果が出ない」という人がいるけど、それはここのステップをきちんとやっていない場合が殆ど。
つまり、意味わからない英語の文章を意味わからないまま声に出してるだけなんだよ。
意味も分からずお経を呼んでるのと一緒。
そんなのは何年やったって意味ないからね。
4. 音読を繰り返す
ここまでしっかりと準備をしたら音読を繰り返そう。
動画をipodなどにダウンロードし、音声と同じ速度で読んでいく。
音声に置いていかれても気にしないで次の文章からまた同時に始めよう。
繰り返しているうちに追いつけるようになってくる。
では、一つの動画に対して何回音読を繰り返すべきか?
これは、シンプルに言えば、「音声と同じスピードで読んでも意味が理解できるようになるまで」という事に尽きる。
最初のうちは30回くらいを目安にするといい。
動画の数をこなして、英語力が上がるにつれて必要となる回数は自然に減ってくよ。
注意点は、
・意味をしっかりと捉えながら読む事
最初のうちは頭の中で日本語にしながらでも、きちんと意味を捉えながら読むようにしよう。
音読で効果を得られないという人は意味を捉えずにとりあえず音だけ口にしている場合がある。
意味も分からずに声に出しても全く意味はないからね。
・発音を真似する
スピーカーの発音を可能な限り真似をしよう。
音読をしっかり行うと発音が良くなる。
発音が良くなるとリスニングも伸びる。
まとめ
ここまで一連のTEDの使い方を説明したけど、どうだろう?
もしかすると、「面倒くさ!」と感じた人も多いと思う。
確かに、市販されているNEWS DIGESTのような教材を使えば、日本語訳も、単語の意味も載っているので、こんなに手間はかからない。
つまり、お金を出せば教材として体裁の整ったものを使う事になるのでそれだけ手間を省く事ができる。
一方でTEDは手間はかかるし、動画1本に数日かかるかもしれないけど、それ以上のメリットもある。
例えば、
・無料である
・膨大な数の動画があるので自分の好きなテーマのものを選ぶ事ができる(市販教材では予め収録されたものから選ぶだけ)
・特にビジネスマンにとっては大きなインサイトをもたらすものが多い
などなど。
やっぱり内容に興味の持てない動画や音声を使っても続かない。
ニュースを使って音読をしてもニュースの内容自体に興味が持てないとやっぱり続かないよね。
だから興味が持てるものを使うのはとても大事。
そして、何よりもこういった無料の素材を英語学習に活用する方法を知る事はあなたの英語力の成長を大きく加速させる。
8割の人は「どう使うか」についはあまり考えずに「何を使うか」ばかり考えてしまう。
Amazonのレビューなんかを見て「どの参考書が良さそうか」という事ばかりに気を取られてしまう。
その結果、何が起こるかというと、モチベーションが下がった時に教材のせいにしてしまうんだよね。
そして新しい教材を買ってまた同じ事を繰り返すので、身に付かない。
しかし、「どう使うか?」を考えながら、自分で工夫して学習スタイルを確立していける人は圧倒的に成長が早い。
TEDを始めとして、英語学習に使える素材は沢山ある。
それらを自分なりに英語学習ツールへと転化させていくノウハウはとても大きな武器となるので、まずはTEDでお気に入りの動画を見つけて欲しい。
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