【通関士試験 】不合格になる人がやってる悪手。それは反面教師。

通関士テキスト類

通関士試験は年に一度きりです。絶対に合格したい。想いが強ければこそ、絶えず不安も生まれてきます。

「何度も同じ問題を間違ってしまう…勉強法が合ってないのかなぁ」
「模試マジ死んだわ…参考書を買い足すべきかなぁ」



何度思ったことか…。



過去問を解く。たくさん正解できた。「あー、これ受かっちゃうな!」からのテンション爆上がり。不正解を連発。「終わったわ。もうこれ終わったわ。」から失意の底へ紐なしバンジー。そんなメンタルの起伏の中で不安は絶えずコップの水の泡のようにどこからともなく湧いてきます。

目次

反面教師から学ぶ悪手。


今回は、「それやったらダメやつ…!」という悪手について書いています。


ネット上では、「これやったらいいよ!」とか「私はこれで合格したよ!」みたいな情報で溢れてます(まぁ、私のブログもそうですが!)。でも、結局それって「人によるじゃん」っていうことも多い。そもそも、同じ受験生といっても、既にフォワーダーで働いている人もいれば、これから貿易業界に転職したいと思ってる人もいます。同じ勉強メニューなはずがない。


まぁ、通関士試験の勉強法にも正解なんてのはないわけです。



でも、不正解はある。
個人の経歴や能力的な特性に寄らず、それだと落ちちゃうよ、と言わざるを得ないアプローチはいくつかあります。オススメの勉強法よりも、むしろ「ダメなやり方」の方が腹落ちすることってありますよね。今回はそんなお話です。

1. 通関士試験の難易度を見誤っている。


通関士試験は甘くはありません。世の中の資格試験の中でも比較的難しい部類に入りますし、貿易系の中では唯一の国家資格です。そんなこと知ってるよ、と侮るなかれ。実感と適度なプレッシャーを感じながら学習できている人はあまり多くないように思います。

通関士試験合格率の推移

年度全科目受験者合格率
2024年11.2%
2023年23.0%
2022年17.7%
2021年14.9%
2020年14.4%
2019年12.5%

2023年は23%まで上昇し、対して2024年は11%にとどまりました。乱高下があるものの、概ね10~20%くらいと言えます。

2024年は関税法が難しく、60%→55%へ合格基準が引き下げられましたが、それでもなお合格率は11%にとどまる厳しい年でした。

この数字を高いとみるか。低いとみるか。「20%か~。なかなか厳しいですなぁ」なんて言いながら心の中では「まぁ、なんだかんだ受かるっしょ」と思ってたのは3月の私。甘かったです。「楽観主義は3月の私」。なんかアニメのタイトルみたい(どうでもいい)。


挑戦しようとしているのは、10人に1~2名しか受からない試験ほんとどの人が落ちます。その事実をわかってるようでわかってない。



8月の関税協会の模試。東京会場だった大正大学の教室には30人くらいでしょうか。休憩時間になると、皆おにぎりを片手に張り詰めた視線を参考書に落としていました。あぁ、みんな必死にやってきた人たちなんだ。「それでも、この教室にいるる人のほとんどが落ちるんだよな……」そう思った時に、急に怖くなったのを覚えています。



何百時間勉強してきた。プライベートを犠牲にしてきた。関係ない。実力が足りなければフツーに落とされます。何の共感も賞賛も余韻もなく、ただ1年が終わります。



怖い試験です。私たちが挑んでいるのは。その怖さを知り、克服するだけの準備をしなくてはいけない。精神論めいた話になってしまいますが、適切な恐怖と、適度なプレッシャーを感じながら己を鼓舞できる人が最後には合格を勝ち取ります。


合格にまぐれはありません。不合格にもまぐれはありません。受かる人は受かるべくして受かり、落ちる人は落ちるべくして落ちます。


ほとんどの人が落ちる試験なんです。
合格は常に半歩先にある感覚と適度なプレッシャーを。

2. 合格ライン6割の呪い。


通関士試験は6割とれば合格する。
通関士試験の勉強を始めるにあたって最初に知ることですよね。


確かに6割とれば合格します。
ですが、6割を狙う勉強では6割をとれません。


どうも、予備校や通信講座などの通関士試験界隈では「6割とればいい」というメッセージだけが先行しているように見えます。フォーサイトなどの通関士対策講座でも「6割を取らせる学習内容!」を執拗にアピールしています(フォーサイトについてのダメ出しは下の記事からどうぞ!)。



このブログでは何度も書いていることですが、通関士試験は、8割とる覚悟と準備で挑んでどうにか6割を維持できた人が合格する試験です。

もとより「6割取ればいいんでしょ」というマインドでは落ちてしまいます。過去問を解いて7割正解していれば「合格ラインだ」などと安心してしまう。ダメです。過去問であれば、8割9割取れるようになっているのは当たり前です。それでもどうにか、という感じです。

3. 量にとらわれ過ぎている。

学習時間400時間。そんな指標にとらわれ過ぎている人がいます。気をつけなければならないのは、こういう数字には大した根拠も意味もないということです。


300時間で合格する人もいます。700時間勉強しても不合格になる人もいます。〇〇時間勉強すれば受かる、というものではありません。結局、実力=学習時間 x 質で決まります。700時間勉強しても質が0.5であれば実質350時間分にしかなりません。300時間の勉強でも質が2であれば600時間相当になってしまう。質の話を脇において量の話ばかりしてしまう人が多いです。


スタートラインは人によってバラバラ。一番わかりやすいのは経歴。例えば、既に通関業者で働いている人が受験する場合に比べて、まったくの貿易初心者では遥か後方からのスタートになることは目に見えていますよね。他の人にとってはハーフマラソンの距離でも、あなたにとってはフルマラソンの距離であることも珍しくありません。

「通関士試験合格に必要な学習時間は400時間」だなんて言うじゃないですか。ユーキャンとかが。でも、400時間勉強したから合格するわけでも、400時間に満たないから不合格になるわけでもありません。このような情報に振り回されると、400時間をこなすことが目的化してしまいます。学習時間が400時間に達するよりも、その400時間をどう使うか?が重要なんです。



とはいっても、目安がないと困っちゃうよ!という方もいると思います。確かに、量をこなしてないクセに「質が大事だよね」なんて言っちゃうヤツほど結果を出さないもんです。ざっくり300時間。通関業者で働いている人であっても最低それくらいは時間を費やしている印象です。

人によってスタートラインは違うので、学習時間を目的化してはいけない。量だけじゃなく質も重要。ただ、最低300時間は勉強してから質の話をしよう。

4. 暗記ばかりで法令趣旨への理解が浅い


なぜその法律があるのか。どういう状況を想定して作られていて、どんな不正を抑止しようとしているのか。他の似た制度とは何が違うのか。

こういう掘り下げをしない人は本番に弱い。ただテキストの上澄みを撫でるような暗記に頼ってしまう。その結果、知識が金属の箔のようにピラピラと浮遊していて、今にも剥がれ落ちそうな状態になってしまう。ちょっと問題文の言葉尻を変えられると途端に解けなくなる。


過去問解くのが上手いだけの人になってはいけません。

いや、過去問をひたすら解くのも必要ですよ。そういう時期は絶対に必要。問題はその先なんですよ。そこが8割越えを狙う覚悟の部分です。自分で法令文を読む。似たような法令と比較し、何が違うか腹落ちさせる。矛盾を感じたら解消する。例外の例外まで覚える。その積み重ねです。

例えば、「積み戻し」と「仮陸揚げ」の違いがフワッとしたままの人。なんとなーく「日本に輸入されないで外国に戻ってく貨物」くらいに思ってる。BP承認と特例輸入申告なんかもそう。だから言葉をすり替えられると思いっきり顔からコケる。


疑問点は残さない。決して残さない。その覚悟で。

たかぎぶそん

通信講座を使っている人はきちんと質問制度を使いましょう。

5. 通関実務の学習に取り掛かるのが遅い

これは私自身の反省によるところが大きいです。
どうにか合格はしましたが、もっと早く通関実務の勉強をスタートしていればあそこまで追い込まれなかったはず。8月と9月は本当に苦しかったなぁ…。関税協会のHPにある合格体験記などを読んでいても、同様の意見は目立ちます。


「通関実務には関税法の知識がベースになるので、まず関税法と通関実務の学習から始めましょう」


ほとんどの講師はこう教えます。私は通関実務の勉強を始めたのが7月。正直遅すぎました…。それまで通関実務のテキストさえ読んでいなかったので、その難しさを知らず、オマケのような科目でしょ、と舐めていたわけです。で、いざ学習を始めた途端に、「な…なんじゃこりゃ……全然無理なんだが!?」。模試では半殺し状態までボコられる。いやー、焦りました。

8月の関税協会の模試でボコボコにされたことをきっかけに私は通関実務という科目の特徴と対策についてかなり考えるようになりました。通関実務は計算問題も多くて、関税法や通関業法のように暗記だけでは勝負できない内容になっています。論理的に考える力とスピードが求められますので、他の2科目とは、使う脳みその場所が違うんですよね。

そして何より怖いのが、通関実務は伸びる人と伸びない人の差がハッキリと分かれる点です。直前期に頑張ってどうにかなる人もいれば、通関実務が原因で何年も不合格になる人もいます。自分が通関実務と相性が良いかは取り組んでみないとわからない。だから早いほうがいいんです。



遅くとも6月に入ったら本腰をいれましょう。

6. 時間配分を遵守するトレーニングをしていない

特に通関実務は時間との勝負です。一番やってはいけないのは、1つの問題にウジウジと執着してしまい時間オーバーになってしまうことです。見切りをつける勇気が必要なのですが、これは「時間になったら残りの問題はあきらめて次にいく」という訓練を日頃から徹底していないと、本番では怖くて到底できません。

「はぁはぁ……マズイ。時間がない。予定の時間を既に超えている。早く次の問題に行かないと。この問題は捨てないと…そう…捨てないと…いや、待て。この2点のせいで不合格になったら…できない…捨てられない…あと少し考えれば解けるかもしれない…あと少し…そうあと少し…ダメだ思い出せない。どうすれば…何か問題文に足掛かりは…何か…!」

デスノートの台詞のように凄まじい葛藤で脳が埋め尽くされ、時間を浪費する。解けたはずの他の問題も時間がなくて解けない。最悪の悪循環です。そんなことは皆分かってる。わかっててもできない。これは勇気とか精神力というより訓練の問題です。

7. 生活リズムをチューニングできていない



試験が近づくほど、深夜まで頑張ってしまう。何ならもう、カップ麺とかも食べちゃう(美味しい)。


8月には朝型の生活にしましょう。 通関士試験は9:30に1科目目の通関業法が始まります。9:30には頭がバチバチに冴えていなければいけません。

私の場合は、いつも8時に起きて10時からリモートワークで仕事を開始するような生活だったので、正直9:30とか頭回ってませんでした(笑)これはちょっとマズイなと。朝起きて頭が冴えてくるまでって、自分が思ってるよりも結構時間がかかります。あなたはどうでしょうか?9:30には脳がすでに覚醒していますか?普段の生活で、頭がスッキリとして稼働し始めるのが何時くらいかチェックしてみてください。

私は9月からはリモートワークはやめて、6時に起きて、8:30〜9:30まで会社の近くのマックで勉強するというサイクルを作りました。6時には起きないと9:30に脳がフル稼働状態にもっていけないということに気が付いたからです。

夜型な生活を送っている人は、9:30にはバキバキな状態にできる生活リズムを作ってください。脳が寝てると起きてるでは恐ろしいほど点数に影響があります。

まとめ:自分のスタイルを確立せよ。

300時間勉強した。いや、私は700時間勉強した。テキスト5週した。 そんな情報に振り回されても意味はありません。

これをやったら必ず受かるという方法はありませんし、正解は人によってかなり変わってくるものです。貿易関連の仕事に既に就いている人。貿易検定は既に持ってる人。そういう人のスタイルをまったくの貿易初心者がマネしても失敗します。そもそもスタートラインが違うのですから。ですが、各社の合格体験記にはそういった情報があまり載っていません。だから自分で考えないといけません。

一方で、「これをやってたら落ちる可能性が高まる」というパターンは大体決まってます。それが今回ご紹介した内容となりますので、ネット上にある他人の合格体験記を安易に自分に当てはめず、自分に必要な学習量と内容を見極めながら進めていきましょう。

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