国際郵便物課税通知書をご存知でしょうか。
通関士試験の勉強をしていると納税告知書だの、納付書だの、国際郵便物課税通知書だの・・・似たような名前の書類がたくさん登場しますよね。
「よく分からないけど、どれも関税の支払をする紙でしょ?」
このような曖昧な理解のままになっている人も少なくありません(正直、私もそうでした)。
字面だけ見ると似てますからね。無理もありません。でも、受験生はきちんと抑えておくべきです。

今回、イギリスから個人輸入で買い物をしたのですが、ちょうど課税通知書の現物が手に入ったので、題材にしたいと思います。
文字だけで覚えるより理解が深まるはずなので、受験生はご一読ください。
買ったのはシェービング用石鹸とブラシ






まず、どんなものを買ったかといいますと。
①シェービング・ソープと②シェービング・ブラシです。
私は髭剃りにこだわりがありまして。オジサンがただ髭剃ってるASMR動画とかよく見ます(笑)女性には伝わりにくいかもしれませんが、日本はあまりシェービング・グッズが充実していません。海外のように「シェービング・ソープを専用ブラシで丁寧に泡立ててゆっくりと剃る」みたいなジェントルマンな文化がそもそも無いんですよね。ドラッグストアで売られているのは、すぐに使えるジェルや泡(フォーム)タイプのものだけ。シェービングソープもブラシも売ってません。
シェービング・ソープとブラシがどのようなものかは、この動画の2:40くらいから見ていただけると分かると思います。
シェービング・ソープ・・・GBP 25.83(約4,900円)
シェービング・ブラシ・・・GBP66.67(約12,700円)
本格的なシェービング・ブラシはアナグマの毛を使っていて、割とイイ値段します。GBP(ポンド)が大体190円くらいなので、私が買ったブラシは12,700円くらい。



冷静に考えると高い買い物をしてしまった。
届いた書類


課税通知書等在中とデカデカと書かれたパウチの中には国際郵便物課税通知書や不服申し立ての案内などが入っていました。箱側面に貼られているのは輸出者のInvoice(仕入書)です。








関税は0円。消費税が800円。


上の画像にあるように関税は0円でした。
今回かかったのは消費税の800円だけ。
なぜ関税が0円だったのか
さて、ここで疑問なのはなぜ関税については無税だったのか、という点です。
まず、石鹸とブラシそれぞれのHSコードを確認します。
・シェービング・ソープ・・・3307.10.000
・シェービング・ブラシ・・・9603.29.000
シャンプーや石鹸は33類ですね。
通関士試験の受験生は類くらいは覚えておきましょう。私は33→サンサン→太陽→太陽のシャンプー→ディアボーテHIMAWARIと覚えてました(覚えにくい)。
ブラシは96類の雑品です。歯ブラシなんかも同じです。
通関実務の問題では、シャンプー、ヘアワックス、髪用ブラシ、歯ブラシ、歯磨き粉など同じジャンルだけど類が違うものを混ぜて出題してきます。



受験生の時は家のお風呂や洗面所にあるものを片っ端からHS分類しました。
HSコードは分かったので、関税率を実行関税率表で調べてみます。
そうすると、WTO税率はソープが4.8%でブラシが6.6%でした。
おかしいですね。
通関士試験の受験生なら「20万円以下だから簡易税率では?」と思いあたるはず。では、簡易税率表を確認しましょう。そうすると、33類は3%、96類は5%であることが分かります。
やっぱり計算が合わないですね。
そこで注目するべきは国際郵便課税通知書に書かれている「原産国 UNITED KINGDOM」の文字。


そう、EPAですね。
もう一度、実行関税率表を見てみましょう。


シェービング・ソープは日英経済連携協定が適用されると無税になります。なので、私は関税を払う必要がなかったということですね。ブラシも同じように無税でした。
課税標準が安いのは何故か?


次に消費税です。
消費税は7.8%で地方消費税は2.2%(消費税の22/78)。通関実務に出てくるお決まりの税率ですね。
ただ疑問があります。
計算の元となる課税標準が10,589円になっているのは何故でしょうか。
シェービング・ソープ・・・GBP 25.83(約4,900円)
シェービング・ブラシ・・・GBP66.67(約12,700円)
先ほど書いたように今回の商品金額は上記の通りです。
為替レート(輸入申告の前々週の平均レート)がいくらだったのか正確には分からないのですが、この時期の英国ポンド(GBP)はおよそ190円だったので、その前提で計算しています。
そうすると、合計は17,600円になりますよね。
でも課税通知書では10,589円と安くなっています。この差額は一体何なのでしょうか?
これは個人輸入の規定に関連します。
ご自身の個人的使用の目的で輸入する貨物の課税価格は、海外小売価格に0.6を掛けた金額となります。その他の貨物の課税価格は、 商品の価格に運送費及び保険料を足した金額になります。
https://www.customs.go.jp/zeikan/pamphlet/kojintsukan.pdf
これは税関資料からの抜粋です(9ページ目)。
17,600円に0.6をかけると10,560円になりますので、課税通知書にある10,589円とほぼ一致します。誤差は適用する為替レートが正確ではないためです。



上記の抜粋元の資料は個人輸入のことが分かりやすくまとまっているので、受験生は読んでおくことをオススメします。
どうやって納付したか?
海外のサイトで買い物をしたことがある人は経験あると思いますが、納付は簡単です。配達にきた郵便局の人にその場で支払います。代引きでお金を払うのと同じような感じ。
郵便物の場合は、納税の告知なしに関税が徴収されます。税関長は名宛人に国際郵便物課税通知書を書面によって日本郵便株式会社を経て通知することとなっており、名宛人は税額に相当する金銭に納付書を添えて、これを日本銀行(国税の収納を行う代理店を含む)に納付するか、日本郵便会社に納付を委託することができます。
規定では「日本銀行(国税の収納を行う代理店を含む)に納付するか、日本郵便会社に納付を委託することができる」なんて小難しく書いてありますが、現実的には後者一択です。
郵:消費税が800円でーす
私:はーい
郵:1,000円からですね。じゃあ200円のお返しでーす
私:どーもー
委託するといっても、配達にきた郵便局の人に支払うだけです。
納税告知書と国際郵便課税通知書を混同しない
今回、私の個人的な輸入を例に説明をしました。
通関士試験的には、冒頭で書いた通り「賦課課税方式」に関係する部分です。
賦課課税方式では関税の納付に関して、「納税告知書」と「国際郵便課税通知書」が登場します。字面だけ見ると似たような書類で、何となく区別せずに覚えてしまっている人も多い部分です。試験範囲の中では細かい部分にはなってきますが、第58回試験で関税法が急に難しくなったように、いつ出題されるか分かりません。
納税告知書も国際郵便課税通知書も様式が税関のHP上で公開されています。通関士試験の問題では、提出書類や申請書類の名前がたくさん出てきて覚えるのが大変ですよね。なので、可能な限り税関のHP上で様式を確認しておくことをオススメします。どんな情報を記載する書類なのか知っておくだけでも、記憶への定着度合いが全然違いますよ。
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