HSコードが覚えられない…。
通関士試験受験者の共通の悩みではないでしょうか。
「全部で97類って……ほぼ100種類じゃん……。紛らわしいのも多いし。バターとマーガリンが違う類ってどーゆーことやねん。知らない言葉も多いし。ばれいしょって。じゃがいもって言えよ。大体さぁ……これ本当に覚えないとダメ?HSコードの問題失点しても合格できるんじゃないの?」
そんな気持ちが湧き起こるのは正常です。
「コスパ悪いから」という理由で、そもそもHSコードを覚えることを諦めている人もいますが、私はオススメしません。HSコードを正面から問う問題は別に落としてもいいし、とれたらラッキー!くらいでいいんです。重要なのは通関実務の核である申告書問題でしっかり得点することです。このあたりは、のちほど説明します。
HSコードに特化した教材があまり無いのが現状
HSコードの学習は超重要だよ!とは言ったものの……実は、悩ましいことに世の中にはHSコードの学習に特化した教材がほとんどあまりありません。強いて言えば、予備校LECがやっている貨物分類に特化した講座でしょうか。(3,6700円と結構お値段が張りますが、余裕がある人はチェックしてみてください)
私はアガルートの通関士講座を使っていましたが、テキストの中ではHSコードをあまり深掘りされていませんでした。類ごとの代表的な品目の一覧がサラッと載ってる程度です。アガルートに限らず、通信講座は全般的にHSコードの掘り込みは浅めな印象です。
個人的にはHSコード専用のテキストが1冊あってもいいくらいだと思うのですが。おそらく、全部覚えようとしても無理だし、出題されやすいところだけ覚えておくのが効率的、という判断なんでしょう。ただ、私の考えは逆で、HSコードの勉強をしっかりやらないから通関実務の点数が安定しないし、通関実務が原因で落ちてしまう人が多いと感じます。その理由は後ほど詳しく書きます。
HSコードの学習に着手するのが遅すぎて泣いた私の話
どうしても、HSコードの学習の重要性について伝えたい。
それは私自身が手痛い失敗をしたからです。
私は8月の模試でボコボコにやられました。通関実務は45点満点中13点と足を引っ張りE判定でした。当時の私は「HSコードなんて覚えても点数にならないしコスパ悪いでしょ」と考えていて、全く覚える努力をしていませんでした。
模試の翌日から慌ててHSコードの学習を始めました(ホント遅すぎ)。試験本番までもう1.5ヶ月。限られた時間の中で、何を優先して覚えるべきかを必死に考えました。試行錯誤はありましたが、最終的に学習方法を確立し、無事に合格に届くことができました。
通関実務……特に申告書問題で伸び悩んでいる人はこの記事を是非最後まで読んでください。申告書問題って伸びる人と伸びない人の差が激しいんですね。いくらやっても伸びない人も多いし、短期でスラスラっと解けるようになる人も多いです。
申告書問題は過去問解きまくったからといって伸びる科目ではありません。なのに、数をこなす事に走り、慣れでカバーしようとする。だからスコアが安定しない。満点近く採れた次の日には全滅だったり、なんてことが頻発します。
申告書問題はHSコードの知識が鍵を握ります。
不合格になる人は、HSコードの学習がいかに申告書問題に影響を与えるか理解していない場合が多いです。過去問を解きまくれば、注釈を読むスピードが上がり関税額の計算スピードも上がると思っています。確かに慣れは必要ですが、それだけでは安定したスコアを出し続ける実力がつきません。
【重要】HSコードは申告書問題のために学ぶもの
私たちがHSコードを学ぶ理由はなんでしょうか?- それは申告書作成問題の対策のためです。
下記のようなHSコードを正面から問う問題で得点するためではありません。
ここを勘違いしている人が多いです。
HSコードの知識を正面から問う問題の例
第15問 下表のAからEまでの各行の右欄(「物品」の欄)のa.からc.までに掲げる物品のうち、
左欄(「関税率表の類」の欄)に掲げる関税率表の類に属さないものはどれか。次の1 から5までのうち、その属さないものの組合せが正しいもの一つを選び、その番号をマークしなさい。なお、正しい組合せがない場合には、「0」をマークしなさい。
関税率表の類 | 物品 | |
---|---|---|
A | 第 7類(食用の野菜、根及び塊茎) | a.乾燥したしいたけ b.乾燥したとうがらし属の果実 c.乾燥した小豆 |
B | 第17類(糖類及び砂糖菓子) | a.化学的に純粋なぶどう糖(固体のもの) b.天然蜂蜜 c.ホワイトチョコレート |
C | 第35類(たんぱく系物質、変性でん粉、 膠こう着剤及び酵素) | a.カゼイン b.デキストリン c.酵母 |
D | 第68類(石、プラスター、セメント、石綿、雲母その他これらに類する材料の製品) | a.水硬性セメント b.コンクリートのれんが c.ミルストーン |
E | 第84類(原子炉、ボイラー及び機械類並 びにこれらの部分品) | a.クレーン b.自動車用のラジエーター c.プラスチックの成形用の型 |
1 A-a B-a C-c D-c E-a
2 A-b B-b C-c D-a E-b
3 A-b B-c C-b D-b E-c
4 A-c B-a C-a D-b E-a
5 A-c B-b C-b D-a E-b
このタイプの問題は出題されたとしても1問だけですし、配点も1点です。個人的には「とれたらラッキー」くいらいのノリで向き合えばいいです。ですが、だからといってHSコードを勉強しなくても良いということではありません。この点を誤解している人は、「HSコードの勉強はコスパが悪い」という間違った発想になってしまうのです。
繰り返しになりますが、HSコードを学習する理由はこのタイプの問題の対策のためなんかではありません。申告書作成問題できちんとコンスタントに正答するためです。
HSコードを勉強するのは申告書問題対策のため
非常に重要な点なので強調します。不合格になる人の多くは通関実務で失敗します。通関実務で失敗する人の多くは申告書問題で失敗します。
ではなぜ申告書問題で失敗するのか? ー 時間が足りないからです。HSコードの分類問題は時間が無限にあれば正解は難しくありません。別冊で配布される表の中に答えは必ずあるわけですからね。時間が足りないから正解できないんです。そういう問題構成になっています。
時間が足りないならどうするか? ー 多くの人が、慣れによってスピードを上げようと努力します。問題文の必要な部分だけ読む、選択肢にあるHSコードを最初にマーカーで色をつけておく、といったやや小手先なテクニックです。誤解を解くと、もちろんこういったテクニックも重要ですし、私も使っていました。ただ、それだけだと時間短縮は頭打ちになってしまいます。
HSコードをしっかり勉強していれば時間内にしっかり解答することができます。この点は重要なので、少し細かくお伝えします。
申告書問題で時間切れになってしまう理由はいくつかあります。
まず、分類を始めるにあたって考慮すべき事前情報が多いのです。配布される別冊には、関連する部注、類注、項の解説などが記載されており、それらを頭に入れた上で分類にあたらないと正解できないようにできています。そのため、品目表と問題文を何度も行ったり来たりしなければならず、あっという間に時間がなくなります。
「羊毛や綿など複数の材料が使用されている場合はどう分類するか?」
「複数の金属元素からなる合金で作られた製品はどう分類するか?」
「水産物を水煮した場合はどう分類するか?」
こういった点にはきちんとルール(部注・類注・号注・項の解説)が定められています。そのルールを知らないと、初見で読み解く羽目になります。これではいくら時間があっても足りません。これらは、試験中に読んで理解するものではなく、ある程度は知っておくべきものです。普通にやっていたら時間が足りないように試験は作られています。つまり、「事前知識としてこれくらいは知っておいてね」という出題者のメッセージなのです。
次に、品目表をあたった際に、階層構造を読み解きにくい場合がある(=どこが切れ目なのか分かりにくい)点です。ジュース類などは典型的な例です。知っていれば何てことないのですが、知らないと面食らいます。
申告書問題はスピードではありません。知ってるか知らないかです。読むスピードや電卓を使った計算が遅いから間に合わないのではありません。知らないから間に合わないんです。
この点を誤解し、「申告書問題はスピードとセンスだ」と思ってる人が多すぎます。そう見えるのですが、実はほぼ知識問題です。だからこそ、HSコードについて知識を持っていれば安定した得点を稼ぐことが可能ですし、知識がなければスコアが安定せず合格がおぼつかないのです。
HSコードの学習におすすめなツール3選
HSコードの学習に必要なことは、主に3点です。
- 紛らわしく引っ掛かかりやすい品目の類を覚える
- 頻出の類の部注・類注・項の解説を知っておく
- 独特な英語に慣れておく
輸出統計品目表
私が通関士試験対策で買ってよかったもの第一が、この輸出統計品目表です!
最大のメリットは試験本番で配布される品目表とほぼ同じということ。
手元にあると実際の試験問題と同じ記載ぶりで確認できるので、対策に非常に役立ちます。品目表は読むのにコツが必要です。特に「どこが切れ目なのか」が分かりにくい場合もあり、それはもう慣れです。日頃から見慣れていればどうってことないのですが、慣れていないと上手く読み解けない場面に遭遇します。
英語が併記されている点も推しポイントです。
私が輸出統計品目表を購入した最大の理由がこれです。
「輸出統計品目表ならネット上で見れば良いのでは?」と思うかも知れません。ですが、残念なことにネット上の輸出統計品目表は日本語版と英語版でページが分かれていて、併記されていないのです。一方、通関士試験本番で配布される品目表は日英併記です。
申告書問題を解くのに高い英語力は必ずしも必要ありません。ただ、出てくる英語が独特で、知らないと手が止まってしまうものもあるので、きちんと英語を慣れておく必要があります。例えば、platedは「めっき」の意味であることや、processedは「調整された」など、頻出の英語もあります。
TOEIC900点でも知らない単語がたくさん出てきました!
例えば、食品では”in airtight containers”という表現が頻繁に出てきます。定型表現です。これを知らないと、問題文に”Frozen Boiled Snow Crab in Airtight Containers”という商品が出てきた時に、これが何なのかパっと分かりませんよね。なので、品目表に同じ英語表現がないか探し回る羽目になりますが、”in airtight containers”が「気密容器入りの」という意味であることを知っていれば、「気密容器に入った凍らせた蟹かな」とすぐ分かります。この差は大きいです。
英語力じゃないです。慣れです。
ちなみに、輸出は「輸出統計品目表」ですが、輸入は「実効関税率表」といいます。中身は似てるのですが、輸入の方が分類の粒度が細かいことと税率が記載されている点が異なります。ただ、実行関税率表も売ってはいますが、サイズがめちゃくちゃ大きいのと、価格も3万円近くします。輸出統計品目表は中古で2,000〜3,000円くらいで買えますので、参考書を一冊買うイメージで捉えていただければと思います。
なお、輸出統計品目表は最新のものを買う必要はありません。私も2024年の試験対策に2023年版を使用していましたので。ただ、2022年にHSコードの大幅な改訂がありましたので、2022年以降のものにしましょう(HSコードは5年に一度の改訂があり、次は2027年の予定です)
メルカリだと2,000円くらいで買えるのでおすすめです。
ゆっくりしゅぜーのYoutube
神チャンネルです。必視です。
1類〜97類までを数本の動画で分かりやすく解説してくれています。私は通勤時間にこのチャンネルの動画を3周くらい視聴しました。どんなものが何類に分類されるのかや、試験に出そうな紛らわしいポイントを覚えることができました。
HSコードの学習はある程度の暗記は避けられません。1〜97類がそれぞれどんなものが分類されているかくらいは頭に入れておきたいところ。私の場合は文字だけで読むよりも動画の方がスッと入ってきて覚えやすかったです。
通関士180
超手前味噌で申し訳ないですが、私が運用している通関士試験関連のInstagramアカウントです。特に紛らわしいHSコード(ミネラルウォーターと海水とか、バターとマーガリンとか)についても投稿しています。
画像イメージで捉えていただくことで頭に入りやすいと思いますので、ぜひ活用いただけたらと思います。
フォローお願いします😭
HSコードは武器にも急所にもなる
HSコードは勉強すれば協力な武器となります。勉強しなければ致命的な急所になります。
通関士試験で不合格となる人の大半は、通関実務で失敗しています。通関実務で失敗する人は、申告書問題で失敗しています。
申告書問題は輸出と輸入それぞれ1問ずつ出題されます。それぞれ特定のジャンルの品目が出題されることが多いです。例えば、輸出では魚介類、輸入ではジュース類が仕入書にならんでいる、といった具合です。重要なのは、苦手な分野を作らないことです。
「3類(水産物)や16類(調整品)は得意だけど、繊維系は苦手……」
これではダメなんです。山を張ってるのと変わりません。博打です。もし本番で繊維系が出題されたら頑張ったアナの1年は何の成果も残さず終わります。
通関実務はスピードとセンスだと思ってる人がいますが、違います。きちんと準備すれば、しっかり得点ができます。ただ、出題範囲が多岐に分かれることもあり、「これ1冊やっておけばOK」みたいな思考停止的に頼れるテキストが世の中にないんですよね。自分で対策法を考えないといけないので、芯を食った学習がしにくく、きちんと準備できている人が少ないのです。加えて「HSコードの学習はコスパが悪い」といった誤った情報が先行してしまい、準備不足から致命的な失点を招く人が多いのです
HSコードをがっつりやれば、通関実務のスコアは安定し合格圏に届いてきます。だって、27点取ればいいうちの20点が申告書問題なんですから。
やれば武器。やらなければ急所。
やりましょう。
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